第3話 生まれ変わったら仔猫でした

「気が付いたにゃ?」


「ミャ?」


「まったく、君は仔猫こねこにゃんだから、木登りはまだ早いにゃ」


 目が覚めると、いきなり巨大なミケネコにお説教せっきょうされた。


 どういうこと?


「ミャー」


 声を出したつもりが、ぼくの口から出たのは、仔猫の鳴き声だった。


 え? なんで?


集落一しゅうらくいち大きな『イチモツの木』にいどむなんて、危なすぎるにゃ。もう、登っちゃダメにゃよ?」


 目の前にいる巨大ミケネコも、ニャーニャーと鳴いている。


 その鳴き声は、脳内で自動変換じどうへんかんされて、何をしゃべっているか理解りかい出来た。


 例えるなら、耳から聞こえるのは英語だけど、英語の知識があるから、脳内で日本語に翻訳ほんやくされる感じかな。


Thisこれ is a book本です.」みたいな。


 いやいや、どうなってんの? これ。


 っていうか、何? その卑猥ひわいな名前の木?

 

 訳が分からなくて、混乱しながら、状況を把握はあくしようと周囲を見回す。


 すぐ側には、緑色の葉がしげる、大きな木がそびえ立っていた。


 これが、「イチモツの木」かぁ……。


 確かに、大きくてご立派な巨……いや、みなまで言うまい。


 ミケネコの話によると、ぼくはこの木に登り、足を滑らせて落ちたらしい。


 見たところ、ここは森の中にある小さな集落か、村といった感じ。


 人の姿はなく、代わりに、何故か二足歩行にそくほこうしている大きな猫が何匹もいた。


 良く分からないけど、幸せいっぱい猫いっぱい。


 え? ってことは?


 ここで初めて、自分の体を確認した。


 ぼくの体は、真っ白な猫の毛でおおわれていた。


 ほっぺたを触ると、猫の長いヒゲが生えている。


 頭の上には、三角の薄っぺらいネコミミがあった。


 手を見れば、クリームパンのような真っ白ふわふわおててに、まんまる肉球がついていた。


 人として生まれたからには、絶対にあるはずのない、ぼくの手のひらに肉球がっ!


 思わず、顔をさわると、肉球がプニプニして気持ちが良かった。


 ついでに、匂いもぐと、香ばしいポップコーンみたいな匂いがした。


 これだよ! ぼくの求めていた幸せの肉球はこれだよっ!


 絶対に叶わないと諦めていた、My肉球に感激した。


 どうやら、猫の神様の言った通り、ぼくは猫に生まれ変わったらしい。

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