第2話 猫の神様

 気が付くと、真っ白な場所にいた。


 ここは、どこ?


 ぼくは、どうなったの?


「気が付いたか、少年」


 え? なにこれ?


 脳内に直接、声じゃなくて言葉が、流れ込んでくるんだけど。


「申し訳ないが、お前は死んだ」


 死んだ? マジでっ?


「マジで」


 なんで?


「仔猫を助けただろう?」


 そうだ、ぼくは木から降りられなくなった仔猫を助けようとした。


 確か、足場にしていた枝が折れて、木から落ちた。


 その後の記憶がない。


「少年は、頭から落ちて、首の骨を折って死んだ」


 マジでっ?


「マジで。疑うなら、死ぬ決定的瞬間の動画もあるが、観るか?」


 いや、自分が死ぬ動画なんて見たくない。


 首が折れた自分の死体を、見たい人なんているだろうか。


 うわ~……マジか。


 仔猫を助けようとして、自分が落ちて死ぬとかないよ。


 思わず頭を抱えたくなったが、腕がない。


 それどころか、体もなかった。


 え? どうなってんの?


 死んだから、体が失くなったのか?


「して、どうする? 少年」


 どうするって、何が?


「仔猫を助けてくれた礼に、新しい命をさずけてやろう」


 え? 生き返れる……ってコト?


「生き返るのではなく、生まれ変わるのだ」


 ってことは、あなたは神様?


「神には違いないが、私は猫の神だ」


 猫の神様?


「私は猫の神なので、人を生き返らせることは出来ない。代わりに、猫の命をさずけよう」


 つまり、猫に生まれ変われるのかっ? やったー!


「『やったー!』って。猫に生まれ変わることに、抵抗ていこうはないのか? 少年」


 ありません! むしろ、猫大好きなんで、猫になりたかったんです。


「そうか、良かった。ならば、新しい猫の命をさずけよう」


 はい、ありがとうございます、猫の神様っ!


「次は、死なないように気を付けて生きるのだぞ、少年」


 その言葉を最後に、また意識が飛んだ。

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