第3話 ねこねこパラダイス

 自分の体を確認していると、ひときわ大きな猫の鳴き声が聞こえて来た。


「シロちゃん! 木から落ちたんだってニャ? 大丈夫だったかニャ?」


 大きなシロブチネコが、ぼくに向かって突進してきて、ぎゅっと抱き締められた。


 白い腹毛はらげがふわふわ柔らかくて、めちゃくちゃ気持ちいい。


 これ、絶好ぜっこう猫吸ねこすいチャンスじゃん。


 あこがれの猫吸い、ずっとやってみたかったんだよね。


 せっかくだから、思いっきり堪能たんのうしておこう。


 そこで、また別の猫の鳴き声が聞こえてくる。


 シロブチネコの腹から顔をのぞかせると、サバトラネコがミケネコと話をしていた。


「すみませんニャー、ミケさん。うちのシロちゃんが、ご迷惑をお掛けしましたニャー」


「これくらい、なんのなんのにゃ。でも、仔猫は危ないから、もう目をはなしちゃダメなのにゃ」


「はい、これから気を付けますニャー」


 シロってのは、たぶんぼくの名前だろう。


 真っ白なシロネコだから、シロ。


 ミケネコは、ミケと言う名前らしい……まんまかよ。


 どうやら、シロブチとサバトラが、ぼくの親猫らしい。

 

 ミケと話を終えたサバトラが、ぼくに優しくニャーと声を掛けてくる。


「ケガはしてないかニャー? シロちゃんが木から落ちたと聞いた時には、飛び上がるほどビックリして、それはそれはもう心配したニャー。無事で良かったニャー」


 そう言ってサバトラは、ぼくを背中から抱き締めてくれた。


 シロブチとサバトラにサンドイッチされたぼくは、「ミャー」と喜びの鳴き声を上げた。


 人間だった頃のぼくは、めちゃくちゃ猫好きだったんだけど、猫アレルギーで触れなかったんだよね。


 猫に生まれ変わった今は、大好きな猫に触り放題だ。


 ぼくの望む世界は、ここにあったんだっ!


 ねこねこパラダイス、最高っ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る