第4話 猫会議の謎

「シロちゃん、お医者さんにてもらいましょうニャ」


「ちゃんと調べないと、心配ニャー」


 親猫達が、ぼくの体をしきりに心配している。


 仔猫が高い木から足をすべらせて落ちたら、普通、病院へ連れて行くよね。


 骨が折れていたら、大変だし。 


 特に痛いところはないけど、どこかケガをしているかもしれない。


 ねんためてもらった方が良いと思う。


 どうやら、この集落しゅうらくにはお医者さんがいるらしい。


 猫のお医者さんって、どんな感じなんだろう。


 ちょっと楽しみではある。


 お医者さんへ連れて行かれる途中で、たくさんの猫達を見かけた。


 毛づくろいしたり、日向ぼっこしたり、お昼寝したり、猫会議ねこかいぎをしていたり。


 みんな、あちこちで思い思いに過ごしていて、実に長閑のどかだ。


 猫会議ってのは、数匹の猫達が一ヵ所に集まって座っていること。


 猫会議は、人通りが少ない住宅街じゅうたくがいの道や、き地なんかで、たまに見られる。


 猫はせまいところが好きなのに、猫会議の時は、見通みとおしが良いひらけた場所に集まる。


 多くの猫研究家によって、「猫会議は、何をしているのか?」は、長年議論ながねんぎろんされている。


 同じ縄張なわばりに住む、野良猫達の交流の場なのか。


 情報交換をしているのか。


 お見合いをしているのか。


 結婚式をしているのか。


 ハーレムなのか。


 特に理由はなく、仲良し同士で集まっているだけなのか。


 夏~秋の夕方頃によく見られることから、みんなですずしいところに集まって、夕涼ゆうすずみをしているのか。


 これらは全部、人間が勝手に考えた仮説かせつ


 猫が猫会議をする理由は、今も明らかになっていない。


 人間にとって猫会議は、永遠の謎。 


 猫会議なので、人に参加権はない。


 人が通りかかると、一斉にこっちを向いて「何見てんだよ」みたいな目で見られる。


 猫会議を見かけたら、猫達を刺激しげきしないように、そっと立ち去るのが正しい。


 愛猫家にとって、猫会議参加は夢である!


 猫になった今なら、猫会議に参加出来るっ!


 猫会議に近付こうとしたら、親猫達に止められる。


「シロちゃん、どこ行くニャ? もう、ひとりでどこにも行かせないニャ」


「お医者さんが、怖いのかニャー? 大丈夫ニャー、お医者さんは怖くないニャー」


「ミャ~……」


 どうやらまだ、猫会議には参加させてもらえないらしい……残念。

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