第8話 猫は肉食動物

 ぼくとシロブチが、頭文字イニシャルGを「食べて」「食べない」でめていると。


 何か重たいものを引きずるような音が、近付いてきた。


 振り向くと、そこにいたのはサバトラだった。


 サバトラは、大きな動物をくわえていた。


 重くて持ち上げられなくて、引きずってきたようだ。


 咥えられた動物は、全然動かないから、完全にしとめられているのだろう。


 サバトラは、動物をその場におろすと、満足げな顔で笑う。


「ふたりとも、ただいまニャー、お土産みやげニャー」


「おかえりなさいニャ」


「シロちゃん、良い子にしてたかニャー?」


「ミャ」


「そうかそうか、良い子ニャー」


 サバトラはご機嫌きげんで、ぼくの頭をで撫でしてくれた。


 サバトラが、何を狩ってきたのかが気になり、おそおそる近付いて見る。


 それは、巨大なネズミだった。


 頭文字イニシャルGよりは、マシだけど……ネズミかぁ。


「さぁ、みんな、食べるニャー」


「いただきますニャ」


 サバトラとシロブチは、美味しそうに食べ始める。


 グロい光景に、思わず、目をそむけた。


 猫科の動物はみんな肉食で、狩った獲物えものを生のまま食べる。


 分かっていたけど、これが猫に生まれ変わった宿命しゅくめいか……。 


「シロちゃん、これも食べたくないニャ?」


「食べないと、お腹がいて死んじゃうニャー」


 全然食べようとしないぼくを見て、ふたりが心配そうな顔で、こちらを見てくる。


 うぅ……そんな目で、見ないでくれ。


 そうだ、考え方を変えよう。


 人間だった頃だって、生肉を食べていたじゃないか。


 寿司だって、刺身だって、生肉だ。


 よし! とりあえず、食べてみようっ!


 グロいのは見たくないから、目をつぶって、肉にみついた。


 あれ? 美味しい!


 当たり前だけど、肉の味がするっ!


 猫になったから、味覚みかくが変わって、生肉も美味しく食べられるようになったらしい。


「やっと食べてくれて、良かったニャ」


「美味しいかニャー?」


「ミャ!」


 ぼくが肉を食べ始めると、親猫達は安心した顔で笑った。

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