第122話 兄貴のプライド

走査そうさ』で、ヒョウ兄貴あにきの傷の場所を調べて、全ての傷にアロエの汁をった。


 虫刺むしさされには、ヤブガラシとアロエで作った抗炎症薬こうえんしょうやくる。


 仕上げに、ヨモギの薬をひとくち飲ませれば、処置完了しょちかんりょう


「ミャ」


 はい、これでおしまいです。


 このまま、お薬と毛がかわくまで、日向ぼっこしてて下さいね。


 あと、このお薬は、めると、ぽんぽんおなかがぺいんぺいんいたいいたいになるので、しばらくは、毛づくろいをしないで下さいね。


「分かったにゃん、ありがとにゃん……」


 ヒョウ兄貴あにきは、ちからなくそう言うと、河原かわらに寝そべった。


 ひと通り作業さぎょうが終わったので、ぼくも川で水浴びをして、薬で汚れた毛を洗い流した。



 その後、れた毛をかわかす為、ふたりでのんびり、河原かわらで日向ぼっこ。


 あったかいお日様ひさまの光で、ぽかぽかしてくると、だんだんねむくなってくる。


 うとうとし始めたところで、ヒョウ兄貴あにきが、ぽつりぽつりと話し始める。


縄張なわばりの猫じゃない、シロちゃんにだけは話すけど……オレは、みんなからたよりにされる、強くてカッコイイリーダーになりたいにゃん。だから、絶対に弱いところを見せられなくて、ケガしても『痛い』って、言えなかったにゃん」


 それを聞いて、ぼくは目をます。


「ミャ」


 はい、そんな気はしていましたよ。


 でも、言えないのは、つらかったでしょう?


「うん……つらかったにゃん」


 ヒョウ兄貴あにきは、深々とため息をいた。


「ミャ?」


 なんで、言っちゃダメなんですか?


「言っちゃダメに、決まっているにゃん! みんなからカッコワルイリーダーだと、思われたくないにゃんっ!」


『みんなからたよりにされたい』『カッコワルイと思われたくない』か……。


 あえて、自分の弱みを見せることで、みんなから信頼しんらいられる、ということもあると思うけど。


 でも、ヒョウ兄貴あにきにも、ヒョウ兄貴あにきなりの、ゆずれないプライド(ほこり)があるんだろう。


 そこで、ヒョウ兄貴あにきが、ガバリと起き上がる。


「そうだ! シロちゃんっ! 、お薬の作り方を教えて欲しいにゃんっ! そうすれば、自分でケガを治せるし、みんなのケガも治せて、みんなからたよりにされるにゃんっ!」


 ……そうきたか。


 最初から、この縄張なわばりの猫達にも、薬の見分け方と使い方を、教えるつもりではあったけど。


 ヒョウ兄貴あにきしか、薬の作り方を知らなければ、みんな、ヒョウ兄貴あにきたよるしかなくなる。


たよりにされたい』って気持ちは、ぼくにも良く分かるけどさ。


 でも、それってなんか、ズルくない?

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