第123話 ズルいヤツは嫌われる

 ヒョウ兄貴あにきに、薬の作り方を教えること自体は、簡単な話だ。


 結果的に、縄張なわばりの猫達は、すくわれるかもしれないけど。


 ぼくが教えた薬をひとりじめして、それでみんなから尊敬そんけいされたいって。


 その考え方が、気に入らない。


 だって、それ、ズルじゃん。


 ぼくはズルいヤツが、ゆるせない。


 ズルしてまで、カッコイイリーダーだと思われたいの?


 ズルやウソは、いつか必ずバレる。


 バレた時、どうなるかとか、考えていないんだろうな。


 ひとつ、深いため息を吐いた後、答える。


「ミャ」


 分かりました、薬草の見分け方と、お薬の作り方を教えます。


「ほ、ホントにゃん? ありがとにゃんっ!」


「ミャ」


 ただし、ヒョウ兄貴あにきじゃなくて、縄張なわばりの猫達です。


「にゃっ? にゃんでにゃんっ? みんなに教えたら、意味ないにゃんっ! たのむから、、教えて欲しいにゃんっ!」


」と言うと、ヒョウ兄貴あにきは、飛び上がるほど驚いた。


 ヒョウ兄貴あにき懸命けんめいに、「」と、うったえてくる。


「ミャ」


 もし、ヒョウ兄貴あにきしか、お薬の作り方を知らなかったとして。


 ヒョウ兄貴あにきが、大きなケガや病気で動けなくなった時、誰がヒョウ兄貴あにきに、お薬を作ってくれるんですか? 


「うっ……それは……! でも、オレが……」


 ヒョウ兄貴あにきは、いつまでもグダグダごねている。 


 そんなヒョウ兄貴あにきに、明るく笑いかける。


「ミャ」


 ヒョウ兄貴あにきは、もうすでに、みんなから頼りにされている、強くてカッコイイリーダーじゃないですか。


 縄張なわばりの猫達の中で、一番狩りが上手ですし。


 みんなからたくさん感謝かんしゃされていますし、いっぱい尊敬そんけいされていますよね?


「そうにゃん! オレは、みんなからたよりにされている、強くてカッコイイリーダーにゃんっ!」


 めたら、ヒョウ兄貴あにき機嫌きげんは、あっさり直った。


 やっぱり、ヒョウ兄貴あにきは、められるのに弱い。


 よし、もうひと押しだ。


「ミャ」


 縄張なわばりの猫達全員が、お薬の作り方を知っていれば、1匹でも多くの猫がすくわれます。


 お薬があれば、ヒョウ兄貴あにきだって、もうやせ我慢がまんなんてしなくて良いんです。


 縄張なわばりの猫達全員で助け合って、みんなで幸せになりましょうよ。


「分かったにゃん。それじゃあ、シロちゃん、縄張なわばりのみんなを集めるから、お薬の作り方を教えてにゃん」


 ヒョウ兄貴あにきは、すっかりご機嫌きげんになって、自分の縄張なわばりへ戻って行った。


 ふっ、チョロいな、ヒョウ兄貴あにき

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