第124話 承認欲求が強い猫

 ヒョウ兄貴あにきと一緒に、縄張なわばりへ戻った。


 約束通り、ヒョウ兄貴あにき縄張なわばりの猫達全員に、薬草の見分け方と、薬の作り方を教えた。


 ちょうど、狩りでケガをしたという猫達がいたので、実際じっさいに使うところを見せた。


 興味津々きょうみしんしんで、ワイワイと楽しそうに薬を作る猫達が、微笑ほほえましくて可愛い。


 基本的きほんてきな薬の作り方は、石で叩いてつぶすだけだから、誰でも出来る。 


 アロエとヤブガラシは、葉を折るだけで汁が出てくるから、つぶ手間てまもない。


 難しいのは、薬草の見分け方だけだ。

  

「みんなからたよりにされたい」と、言っていたヒョウ兄貴あにきには、特にしっかりと見分け方を教えておいた。


 みんなが薬草の見分け方で迷っても、ヒョウ兄貴あにきが、教えてあげられるからね。


 正しく見分けられれば、「さすが、兄貴あにきっ!」ってな感じで、みんなから尊敬そんけいされて、ヒョウ兄貴あにきも良い気分になれる。


 それをこっそりと教えたら、ヒョウ兄貴あにき一生懸命いっしょうけんめい、薬草をおぼえていた。


 ホント、そういうところだけは、めちゃくちゃ熱心ねっしんで、本気で尊敬そんけいするよ。


 きっと、もともと真面目まじめで、やさしい性格なんだろうな。


 ただ、他の猫達よりも、承認欲求しょうにんよっきゅう(みんなからみとめられたい、自分を価値かちある存在そんざいとしてみとめたい、という強いねがい)が強すぎるんだ。


 承認欲求しょうにんよっきゅうが、良い方向へはたらけば、良いリーダーになれる。


 悪い方向へ向かえば、ただのワガママなヤツになってしまう。


 ヒョウ兄貴あにきには、みんなにきらわれるヤツに、なって欲しくない。


 ヒョウ兄貴あにきなら、きっとこれからも、みんなから頼りにされる、強くてカッコイイリーダーでいてくれるだろう。


 みんなに、薬の作り方を教えたら、あとは旅の疲れをいやために、ゆっくりとねむるだけだ。



 数日後、ぼく達家族は、ヒョウ兄貴あにき縄張なわばりを旅立つことにした。


 縄張なわばりの猫達が全員で、お見送りしてくれた。


 ヒョウ兄貴あにきは、ぼくをギュッと抱きめて、別れをしんでいる。


「シロちゃん、ありがとうにゃん! シロちゃんのことは、ずっとずっと忘れないにゃんっ! 出来れば、ずっとここにいて欲しかったにゃんっ!」


 縄張なわばりの猫達も、「ありがとう」と、笑顔でお礼を言ってくれた。


 こうして、ぼく達はみんなに見送られて、ヒョウ兄貴あにき縄張なわばりを、あとにした。


 やっぱり、みんなの役に立って、みんなから「ありがとう」って言われると、スゴく嬉しいよね。


 あれ?


 ぼくもひょっとして、ヒョウ兄貴あにきと同じで、承認欲求しょうにんよっきゅうが強いのかなぁ?

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