第125話 家族内感染

 ヒョウ兄貴あにき縄張なわばりを出て、数日後。


 最近、どうも、お父さんとお母さんの様子がおかしい。


 元気がなさそうだし、たまにせきもしている。


 いつも綺麗きれいだった毛並けなみも、つやがなくなって、毛玉けだまが付いている。


 ようした後に、お尻歩き(猫が地面に、お尻をこすり付けるように歩く)しているのを、見かけるようになった。


 それに、毎日食べているはずなのに、ふたりともせてきた気がする。


「ミャ」


 ねぇ、お父さん、お母さん、ふたりとも、なんか具合悪ぐあいわるそうだよ?


「そうだニャー、なんかこのごろ、体が重くて、おなかの調子ちょうしも良くないニャー」


「私も疲れやすくなって、毛もパサパサしてきた気がするニャ。ちゃんと、毛づくろいをかさずにしているのにニャ……」


 やっぱり、ふたりとも具合ぐあいが悪かったらしい。


 お母さんが心配そうに、ぼくの毛づくろいをしながら言う。


「シロちゃんも、毛がパサパサで、ずいぶんせちゃったニャ。可哀想かわいそうニャ……」


「ミャ?」


 ぼくも?


 全然、気が付かなかった。


 言われてみれば、ぼくの毛もパサついている。


 そういえば、ぼくも最近、ちょっとゴロゴロピーちゃんおなかをこわしているっぽいんだよね。


 なんとなく、おなかがっているし、ぽんぽんおなかぺいんぺいんいたいいたいな感じもするし。


 体がダルいのも、旅疲たびづかれかと思っていたんだけど、これは病気の可能性があるな。


 どうやら、ぼく達全員、同じ病気にかかっているようだ。


 そうと分かれば、お父さんとお母さんを、『走査そうさ


症状しょうじょう猫回虫症ねこかいちゅうしょう


猫回虫症ねこかいちゅうしょう処置しょち駆虫薬くちゅうやく定期的ていきてき投与飲ませる


 猫回虫症ねこかいちゅうしょう


 え? ウソでしょっ?


 今、ぼくのおなかの中に、寄生虫きせいちゅうがいるってことっ?


 うわ~っ、イヤだ~! 早く出てってくれ~っ!


 助けて~っ、なんとかして! 『走査そうさ』!


対象たいしょう:キク科ヨモギ属ニガヨモギ』


薬効やっこう健胃けんい(胃を元気にする)、駆虫くちゅう防虫ぼうちゅう


 ありがとう、『走査そうさ


 近くに、ヨモギに良く似た草がえていた。


 これは、みんなに薬草の見分け方を教える時に、「ヨモギと間違まちがえないように」と、いつも注意している、ニガヨモギ。


 よし! これさえあれば、猫回虫症ねこかいちゅうしょうが治るっ!


 急いで、薬を作って、みんなで飲むぞっ!


 ――――――――――――


猫回虫症ねこかいちゅうしょうとは?】


 猫回虫ねこかいちゅうは、猫の小腸しょうちょうみついて、栄養えいよううばい取って成長する寄生虫きせいちゅう


 自覚症状じかくしょうじょうがない(気が付かない)ことが多い。


 知らないうちに、猫が弱っていく恐ろしい病気。

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