第126話 毒草

 さっそく、ニガヨモギを採り、石で叩いてつぶしていく。


 ヨモギって名前が付いているけど、ちょっと匂いが違うな。


 ヨモギは、ヨモギモチみたいな美味しそうな匂いがするけど。


 ニガヨモギは、ヨモギより、薬っぽい匂いがする。


 だけど、イヤな臭いじゃなくて、さわやかなメントールみたいな香り。


 薬を作っていると、『走査そうさ』が発動はつどうした。


警告けいこく:ニガヨモギの含有成分中に入っている成分「ツジョン」に、毒性あり』


過剰摂取かじょうせっしゅ(食べ過ぎ)すると、神経麻痺しんけいまひ嘔吐おうと幻覚げんかく錯乱さくらん痙攣けいれんなどの症状しょうじょう発現出る


 は? ニガヨモギって、毒があるのっ?


 それを、早く言ってよっ!


『ただし、生草なまくさの状態で、数kg以上摂取せっしゅしなければ、上記のような症状しょうじょうは起こらない』


 なんだ、おどかさないでよ。


 つまり、薬として飲むなら、大丈夫ってことか。


 教えてくれてありがとう、『走査そうさ


 だけど、ヨモギをkg単位たんいで食べることはないよ。


 どんな薬も、過剰摂取かじょうせっしゅすれば、毒となる。


 毒があるって知っちゃうと、やっぱり、ちょっと怖いな。


 ねんため、葉そのものは食べないで、しぼった汁だけにしておこう。


 さっそく、自分の肉球に付いたニガヨモギの汁を、ひとめしてみる。


 うわっ、名前の通り、めっちゃ苦いっ!


 でも、ずっと舌に残る苦さじゃなく、一瞬でスッとなくなる、イヤミのない苦み。


 あとには、ニガヨモギ特有のメントールみたいな匂いだけが残った。


 う~む……これは、たくさん飲みたいと思う味じゃないな。


 とりあえず、これを飲めば、猫回虫症ねこかいちゅうしょうは治るんだ!


「ミャ」


 お父さんとお母さん、お薬が出来たよ。


 とっても苦いお薬だけど、これを飲めば病気が治るから、我慢がまんして飲んでね。

 

「苦いのは、イヤニャー……でも、病気は、もっとイヤニャー……」


「せっかく、シロちゃんが作ってくれたから、苦くても飲むニャ」


 ふたりとも、ニガヨモギの汁をめて、その苦さにビックリして飛び上がった。


「苦いニャーッツ!」


「お水、お水ニャッ!」


 ふたりは大慌おおあわてで、川へ水を飲みに行った。


 可哀想かわいそうだけど、猫回虫ねこかいちゅうを出す為だから、仕方がない。 


 ぼくも、ニガヨモギの汁を飲んだ後、口直くちなおしに水を飲みに行った。


 ところで、「定期的ていきてき投与飲む」って、どのくらい?


用法ようほう:2週間に1回』


 毎日、これをずっと飲み続けなきゃいけなかったら、キツかったけど。


 2週間に1回だけなら、まぁ良いか。

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