第44話 両親との話し合い

 思った通り、ぼくが「旅へ出たい」と言ったら、お父さんもお母さんも猛反対もうはんたいした。


集落しゅうらくの外は、危険がいっぱいニャー!」

 

「こんなにちっちゃくて可愛いシロちゃんが、ひとりで旅へ出るなんて、心配で心配でえられないニャッ!」


「ひとり旅じゃなくて、集落で仲間を集めて一緒に行く」と言っても、ふたりは納得してくれない。


「集落の猫達はみんな良い猫だけど、シロちゃんと一緒に旅へ出てくれるかニャー?」


 この集落で生まれた猫は、外の世界を知ることなく、この集落内で一生をえるらしい。


 長老のミケさんやぼくのように、外の世界にあこがれて、旅へ出る猫の方が珍しいそうだ。


 集落で仲間達と暮らす方が、安心安全だから。


 狩りが苦手な猫でも、狩りが得意な猫がお土産を持って帰ってくれる。


 危険生物の襲撃しゅうげきがあったとしても、仲間達と協力して対応出来る。


 いざとなったら、みんなで逃げて、安全な場所で新しい集落を作ることも出来る。


「森の中はとっても危ないから、集落を出るなんて、自殺行為じさつこういとしか思えないニャ」


 お父さんとお母さんがどんなに反対しても、ぼくの決意はるがなかった。 


 頑固がんこなぼくに、お父さんとお母さんは、困りてた様子で、顔を見合わせている。


 ふたりは、しばらくウンウンと考え込んでいた。 


 ややあって、お父さんが良い考えがひらめいたらしく、明るい顔で言い放つ。


「そうニャー! 家族みんなで、旅に行けば良いニャーッ!」


「それは、とっても良い考えニャ。みんな一緒なら、安心ニャ」


 なん……だと……?


 ふたりは「そうしましょう、そうしましょう」と、盛り上がっている。


 いや、まぁ、確かに、お父さんとお母さんと別れるのは、さびしいと思っていたけどさ。

 

 だからといって、親同伴おやどうはんって、どうよ?


 それって、ただの家族旅行じゃん。


 お父さんとお母さんは、家族で行く以外は、旅へ出ることを許してくれそうにない。


 結局、親同伴で旅へ出ることが決まってしまった。


 もう、旅へ出られるなら、なんでもいいや……。

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