第50話 走査の弱点

走査そうさ」は、とても便利な能力だ。


 手をかざすだけで、病名、治療方法まで全部教えてくれる。


 ただし、医療知識がないと、全然理解りかい出来ないのが最大の弱点。


 人間だった頃は、「猫博士ねこはかせ」と呼ばれるくらい、猫に詳しかったぼくだけど。


 医学については、これから勉強する予定だったんだ。


 だから、医療用語は分からない。


 っていうか、ネコカリシウイルス感染症かんせんしょうって、何っ?


 ネコインターフェロンとか、ウイルス治療薬ちりょうやくとか、抗生物質こうせいぶっしつなんて、ないよっ!


 そもそも、ネコインターフェロンなんて言葉は、初めて見たぞ。


 ただ、「感染症かんせんしょう」の意味は分かる。


 念の為、お父さんとお母さんにも走査そうさしてみたけど、ふたりは感染症にかかっていなかった。


 良かった。


 オロオロしているぼくを見て、お父さんとお母さんが不思議そうに、首をかしげている。


「シロちゃん、どうしたニャー?」


「この先に、何かあるニャ?」


「ミャ!」


 この近くに、病気の猫がいるんだ!


「じゃあ、シロちゃんが治してあげれば良いニャー」


「シロちゃんのお医者さんの力があれば、絶対治せるニャ」


「ミャ~……」


 治したいけど、薬がないんだ。


 ……いや、待てよ?


 ぼくの恩師おんしである茶トラ先生は、どんなケガや病気も、ヨモギで治ると信じてうたがわない猫だった。


 ってことは? 


 ネコカリシウイルス感染症にも、ヨモギを使っていたに違いない。


 そうと決まれば、近場で見つけたヨモギに、『走査そうさ


対象たいしょう:キク目キク科ヨモギ属ヨモギ』

 

薬効やっこう抗菌化物質こうきんかぶっしつを含む。止血しけつ、痛み止め、歯痛はいたのどの痛み、扁桃炎へんとうえん咳止せきどめ、風邪、肺炎はいえん健胃けんい整腸作用せいちょうさよう肌荒はだあれ、汗疹あせも、肩こり、腰痛、神経痛、リウマチ、冷え症、貧血、高血圧、免疫力強化めんえきりょくきょうかこうガン作用、造血作用ぞうけつさよう浄血作用じょうけつさよう


注意事項ちゅういじこう:体を温める作用がある薬草の為、ほてり、のぼせなどの症状には、禁忌ダメゼッタイ


 いやいや、ヨモギさん、万能ばんのうすぎやしませんかね?


 マジで、ほとんどのケガや病気は、ヨモギで治るじゃん。 


 これなら、ネコカリシウイルス感染症にも効くかもしれない。


 よし、早く病気で苦しんでいる可哀想な猫を見つけて、治してあげようっ!





 ――――――――――――――――――――


【ネコInterferonインターフェロンとは?】


 猫風邪ネコカリシウイルス感染症の治療薬。


 簡単に説明すると、白血球はっけっきゅう免疫細胞めんえきさいぼうにバフをかけるを強化する薬。


 強くなった白血球はっけっきゅうが、ウィルスをやっつけてくれるから、病気が治る。



【ウィルス治療薬ちりょうやくとは?】


 体に入ってきたウィルスが、これ以上広がらないようにおさえ込む薬。



抗生物質こうせいぶっしつとは?】


 体に入ってきた悪い細菌さいきんが、これ以上増えないようにおさえ込む薬。

 


細菌さいきんとウィルスの違いとは?】


 細菌さいきんは、ウイルスよりも10倍~100倍くらい大きい。


 細菌さいきんは、生きているので、分裂ぶんれつして増える。


 ウィルスは、に近いので、自分の力だけで増えることが出来ない。


 ウィルスは、生き物の細胞さいぼう寄生きせいすることで、広がる。


 つまり、細菌さいきんとウィルスは、別物べつもの


 だから、細菌さいきんにウイルス治療薬ちりょうやくかない。


 ウィルスに、抗生物質こうせいぶっしつかない。

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