第49話 巣穴作り


 結局、は見つからなかったので、お父さんが巣穴すあなってくれた。


「ふたりの為なら、このくらいなんのそのニャー」


 全身土まみれになっても、笑顔をやさないお父さんがたのもしい。


「シロちゃん、私達は草を集めましょうニャ」


「ミャ」


 ぼくとお母さんは、巣穴にめる、柔らかい草をたくさん集めた。


 巣穴を作っている間に、空が夕焼け色に染まり、夜が近付いてきていた。


 暗くなると、猫の天敵てんてきである、夜行性やこうせいの肉食動物が活動を始める。


 夜になる前に、巣穴が完成して良かった。


「巣穴が出来たニャー。みんな、一緒に寝るニャー」


「おやすみなさいニャ」


「ミャ」


 作ったばかりの巣穴に入ると、いつものように、お父さんとお母さんにサンドウィッチされる。


 ふわふわもふもふの猫毛に包まれると、とても幸せな気持ちになる。


 お母さんにスリスリして、のどをゴロゴロ鳴らす。


 お父さんとお母さんも、ぼくを抱き締めて、嬉しそうに喉をゴロゴロ鳴らしている。


 この時間が、一番幸せ。


 最初は、親同伴おやどうはんの旅なんて、恥ずかしいと思っていたけど。


 こうしていると、やっぱり、お父さんとお母さんに、ついて来てもらって良かったな。 



 目覚めると、太陽の光がわずかに差し込んで、巣穴がほんのり明るい。


「シロちゃん、起きたかニャー?」


「シロちゃん、良く寝たニャ」


 あれ? お父さんとお母さんが、ぼくより先に起きているなんて珍しいな。 


 巣穴から出てみると、太陽はもう真上にあった。


 しまった、寝過ごした!


 初めての旅で、思ったより疲れていたようだ。


 ぼく、成猫おとなになっても、体力ないなぁ。


 これも、体が小さいせいなのかな。


 そんなことを考えていると、お父さんが一匹のネズミを差し出した。


「シロちゃんが寝ている間に、パラミスを狩ってきたニャー」


「私達は、もう食べたから、あとはシロちゃんの分ニャ」 


「ミャ」


 ひとことお礼を言って、ありがたくネズミをいただいた。


 パラミスは、鶏肉とりにくっぽい味がして美味しい。

  

 食べ終わると、ぼく達は再び、集落を探して歩き出した。


 しばらく、森の中を歩いていると、脳内に文字が現れた。


走査開始そうさかいし


走査完了そうさかんりょう結果表示けっかひょうじ


対象たいしょう:食肉目ネコ科ネコ属リビアヤマネコ』


症状しょうじょう:ネコカリシウイルス感染症』


処置しょち:ネコインターフェロン、ウイルス治療薬ちりょうやく抗生物質こうせいぶしつ投与とうよ。保温して安静あんせいののち、2週間程度で自然治癒しぜんちゆ


 この近くに、病気で苦しんでいる猫がいる!


 早く見つけて、助けてあげなくちゃっ!

 ――――――――――


Paramysパラミスとは?】


 今から約6000万年くらい前に生息せいそくしていたといわれている、原始のネズミ。


 体長約30㎝~60㎝、しっぽの長さは約30㎝、体重は不明。

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