第48話 巣穴探し

 さすがに、ぼく達だけじゃ、大きなシヴァテリウスは食べきれない。


 集落にいた頃は、集落のみんなにお土産に出来たけど。


 猫には、肉を保存する方法も、持って行く手段もない。


 もったいないけど、ここに置いて行くしかない。


 置いて行っても、大丈夫。


 森の中には、「森の掃除屋そうじやさん」が、たくさんいるから。


「森の掃除屋さん」というのは、食べ残しを食べてくれる動物や鳥や虫のことだ。


 美味しいお肉を食べて、おなかいっぱいになったら、眠くなった。


「ミャ~……」       

  

「あらあら、シロちゃんは、もうおねむみたいニャ」


「じゃあ、寝る場所を探すニャー」


 集落にいた頃は、眠くなったらどこでも寝られたし、安心して眠れる巣穴もあった。


 集落には、たくさんの猫達がいたから安全だった。


 しかし、旅に出たら、毎日、寝る場所を探さなければならない。


 一番安全なのは、他の動物が作った巣穴を探すこと。


 野生生物は、ほとんど巣穴を掘ると言っても良い。


 猫だって、鳥だって、魚だって、虫だって、巣穴を掘る。


 巣穴を作る理由は、敵から襲われた時に逃げ込む為、子供を守る為、食べ物を保存する為、雨風をしのぐ為、安心して眠れる寝床の為など。


 巣穴には、巣立ったり、お引っ越ししたりして、誰もいなくなって、になっているものも多い。


 自分では巣穴を掘らず、他の動物が掘った空き巣に、住み着く動物もいる。

 

 ぼく達は手分けして、空き巣を探した。


 誰か、今日だけで良いから、巣穴を貸して欲しい。


 だけど、空き巣は、なかなか見つからない。


 ほとんどの巣穴には、誰かが住んでいた。


 最終手段は、木の上で寝る。


 高い場所は、敵から狙われにくいし、襲われてもすぐ逃げられる。


 しかし、上からも下からも丸見えで、天敵てんてきから見つかりやすい。


 長時間安心して眠れる場所じゃないと、睡眠不足になる。


 猫にとって睡眠不足は、命にかかわる。


 出来れば、巣穴でゆっくりと眠りたい。


 どうしても、見つからなかったら、自分達で掘るしかないか。


 ――――――――――――――


森の掃除屋さんスカベンジャーとは?】


 動物の食べ残しを食べてくれる、野生生物のこと。


 食物連鎖しょくもつれんさによって、全ての生き物は土へかえり、やがて森となるのである。

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