第47話 みんなでひと狩り行こうぜ

 ぼく達は、獲物えものを探して歩いた。


 しばらくすると、近くから、葉を食べるような音が聞こえてきた。


 音を立てないように、そ~っと近付いて、音の正体を確認する。


 見れば、キリン模様もようの牛が、木の葉っぱをもしゃもしゃ食べていた。


 あれは、お父さんが何度か狩ってきてくれたことがある、シヴァテリウス。


 猫よりも体は大きいけど、草食動物なので狩れる。


 向こうはまだ、ぼく達に気付いていないようだ。


 ククク……今のうちに最期さいごの食事を、しっかり味わっておくが良い。


 人間の咀嚼音そしゃくおん(食べる音)は、不快ふかいきわまりないけど。


 動物の咀嚼音そしゃくおんは、不快じゃない不思議。


 動物の食べる姿を見ていると、なんかほっこりするんだよね。


 特に、可愛い動物には、たくさん食べさせたくなっちゃう。


 動物の咀嚼音そしゃくおんは良くて、人間はダメって感覚かんかく、アレなんなんだろうな?  


 そんなことを考えていると、お父さんが小声で指示を出してくる。


「合図を出したら、みんなで飛びかかるニャー」 


「分かったニャ」


「ミャ」


 ぼく達はうなづき合い、息をひそめて、お父さんの合図を待つ。


 シヴァテリウスが、少し高いところの葉を食べようと、上を向いた瞬間――


「今ニャーッ!」


 お父さんの合図を聞いて、ぼく達は、シヴァテリウスへ一斉いっせいおそいかかった。


 シヴァテリウスは、鳴き声を上げて必死に暴れるけど、3対1ならこっちが有利ゆうり


 最後は、お父さんが上手く仕留しとめてくれた。


 お父さんは、集落しゅうらくで一番狩りが上手な猫だった。


 いつも大物おおものを狩って、集落のみんなにお土産をるまっていた。


「さぁ、みんな、食べるニャー」


「いただきますニャ」


「ミャ!」


 シヴァテリウスは、脂身あぶらみが少ない牛肉みたいな味で、とっても美味しかった。





 ―――――――――――――――


Sivatheriumシヴァテリウムとは?】


 今から約500万年くらい前に生息せいそくしていたといわれている、キリンの祖先。


 首は太く短く、キリンというより、キリン模様もようの牛。


 頭には、手のひらを広げたような形をした、大きな角が生えている。


 体長約3m、体重1250㎏


Sivaシヴァ」は、ヒンドゥー教の最高神「Shivaシヴァ」からきているらしい。


theriumテリウム」は、「けもの


 合わせて、「Sivatheriumシヴァのけもの」という意味になる。


 ヒンドゥー教では、牛は聖なる獣なので、絶対に食べてはいけない。


 ちなみに、キリンも牛も同じ仲間だよ。

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