第41話 助手のお仕事

「シロちゃん、次の患者さんをてニャ~」


「ミャ」


走査そうさ(スキャンする力)』をてから、ぼくはお医者さんの助手になった。


 助手になってから分かったことだけど、猫は良くケガや病気をする。


 毎日、なんらかのケガや病気で、猫達がいっぱいやって来るから、なかなかに忙しい。


 今までひとりで、集落の猫達の治療をしてきたのかと思うと、茶トラ先生はスゴイ。


走査そうさ』は、めちゃくちゃ便利な力だ。


 患者さんに手をかざすだけで、症状と治療方法が一発で分かる。


症状しょうじょう化膿性皮膚疾患傷口が細菌に感染している


処置しょち:傷口洗浄せんじょう後、抗菌薬こうきんやく塗布ぬりつける


抗菌薬こうきんやく」には、ヨモギの葉っぱをすり潰したものを使う。


 ヨモギには、殺菌作用さっきんさよう抗炎症作用こうえんしょうさようがあるらしい。


 ほとんどの傷は、ヨモギをすり潰した薬をれば治る。


走査そうさ』は植物にも有効ゆうこうで、ためしにヨモギに使ってみたら、万能薬ばんのうやくであることが分かった。


 用法ようほう用量ようりょうさえ間違えなければ、色んなケガや病気に使えるようだ。


「ミャ」


「分かったニャ~」


 ぼくが患者さんを『走査』して結果を伝え、茶トラ先生が処置しょちするという流れになっている。


 自然完治寝れば治るの場合は、ぼくから患者さんに直接伝える。


 茶トラ先生は、「シロちゃんが来てくれて、大助おおだすかりニャ~」と、喜んでくれている。


 ひと通り、猫達の治療が終わると、急にひまになる。


 お医者さんが暇なのは、良いことだ。


 お医者さんが暇な時は、ケガや病気で苦しむ猫がいない時ってことだから。


 猫は人間と違って、お金のことは考えなくて良い。


 そもそも、お金というものが存在しない。


 薬代も、その辺にえているヨモギだから、タダ同然どうぜんだし。


 治療費の代わりに、患者さんの家族が、狩ってきた獲物えものを持って来てくれるそうだ。




 暇な時は、茶トラ先生とのんびりとお話をする。


 先生は、なんでお医者さんになったんですか?


「ケガや病気で苦しんでいる猫達を、放っておけなかったからだニャ~」


 ぼくと同じだ!


「シロちゃんは、とっても優しい良い子ニャ~。だから、イチモツの実から、お医者さんの力をもらえたんだニャ~」


 茶トラ先生はニコニコ笑いながら、ぼくの頭をでた。

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