第42話 ぼくに出来ること

 茶トラ先生も、イチモツの実を食べて、お医者さんの力をさずかったんですか?


「わたしは、何度いどんでも、イチモツの木には登れなかったニャ~……」


 茶トラ先生はしょんぼりとして、大きなため息を吐いた。


 ぼくも登ってみて分かったけど、イチモツの木はとにかくデカい。


 高さが10m以上あるから、登るのも降りるのも、めちゃくちゃ大変。


 古い木だから、樹皮じゅひがれやすく、転落てんらくする危険性も高い。


 いくら猫でも、8m以上の高さから転落したら、ケガをしたり、死亡したりすることがある。


 イチモツの木にいどんで、ケガをした猫もたくさんいたに違いない。


 もし、高さに足がすくんで、降りられなくなっちゃった猫は、どうなるのかな?


 集落中の猫達みんなで、協力して助けてあげるのかな?


「みんながみんな、イチモツの木を登れる訳じゃないニャ~。もともと、高いところが苦手な猫もいるニャ~」


 人間だって、高いところが好きな人もいれば、高所恐怖症こうしょきょうふしょうの人だっている。


 運動神経が良い人もいれば、運動が苦手な人もいる。


 猫にも人にも、個体差がある。


 ぼくは成猫おとな儀式ぎしきに合格して、やっとひとりで狩りへ行けることが許されたのに。


走査そうさ」の力をたら、お医者さんの助手が忙しくなって、狩りへ行けなくなってしまった。


 ぼくがお医者さんの助手になってからは、お父さんが狩りを頑張っている。


「お医者さんを頑張っているシロちゃんの為に、美味しいお肉を狩ってくるニャー」と、張り切っていた。


 お父さんや狩りに行ける猫達のおかげで、集落のみんなは美味しいお肉を食べられる。


 ぼくは、ぼくに出来ることを、頑張れば良いんだ。


 茶トラ先生は、お医者さんの力をさずかった訳でもないのに、知識ちしき経験けいけんだけで、お医者さんをやっている。


 茶トラ先生も、先代のお医者さんから、治療の仕方を教えてもらったのかな?


 そんなことを話しているうちに、だんだんと眠くなってきた。


 茶トラ先生も、眠そうな顔であくびをしている。


ひまだニャ~……シロちゃん、一緒にお昼寝するかニャ~?」


「ミャ」


 ひまを持てあましたぼくと茶トラ先生は、患者さんが来るまで、お昼寝をすることにした。




 ――――――――――――――――


【猫が高いところへ登る理由とは?】


 猫は本来、狩りをする野生動物なので、「敵に襲われにくい」「周りを良く見る為」などの理由から、高いところへ登る。


「今まで高いところが好きだったのに、急に登らなくなった」という場合は、ケガや病気の可能性があるから、病院へ連れて行こう。


 高いところから転落したトラウマで、高所恐怖症こうしょきょうふしょうになってしまう猫もいる。


 生まれつき、運動が苦手な猫や、高いところが好きじゃない猫もいるよ。

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