第15話 猫の長老

 他にも色々聞いてみたけど、お医者さんは知らないことの方が多かった。


 お医者さんといっても、万能薬ばんのうやくのヨモギ以外の薬草は知らないと言う。


 ヨモギは、少量しょうりょうなら猫が食べても問題ない草なので、病気の時はすりつぶして、薬として飲むそうだ。  


 なお、猫は自然治癒力しぜんちゆりょくが高い。


 骨折こっせつ捻挫ねんざは、人間の7倍の早さで治るらしい。


 ケガも病気も、「寝て治す」が基本。


 お医者さんは、森に入らないから、森の規模きぼも、森に何があるかも、ほとんど知らないそうだ。


 森にんでいる野生動物の名前も、いくつか教えてもらったけど、実際に見ないことには分からない。


 この感じだと、他の猫に聞いても、同じだろうな。


 結局、見える範囲はんいのことしか分からなくて、ガッカリ。


 お医者さんがなぐめるように、ぼくの頭を撫でながら言う。


「集落で一番長く生きているミケさんなら、何か知ってるかもしれないニャ~」


 ミケさんは、ぼくがこの世界に来て、初めて出会ったミケネコ。


 あの猫が、集落しゅうらく長老ちょうろうだったのか。


 猫って、見た目じゃ、年齢が全然分からないんだよね。

 

 猫も、年を取ると白髪しらがになるらしいけど、もともと白毛だったら分からないし。


 猫の年齢は、獣医じゅういさんや猫にくわしい人しか、分からないと思う。


「ミャ」


 お医者さんにお礼を言って、その場を離れた。


 さて、ミケさんは、どこにいるんだろう?


 しまった、お医者さんに、ミケさんの居場所いばしょも聞いておくんだった。


 とりあえず、ぼくが足を滑らせて落ちたという、イチモツの木の前まで、やって来た。


 ぼくの異世界転生いせかいてんせいは、ここから始まった。


 それにしても、見れば見るほど、ご立派な巨……。


 こんなに大きな巨木から落ちたら、タダじゃまないだろう。


 よく無事だったな、ぼく。


 なんで、この木に登ろうと思ったのかな?


 落ちる前の記憶きおくがないから、登ろうとした理由が分からない。 


 そんなことを考えながら、イチモツの木を見上げていると。


 後ろから、誰かに頭をでられた。


「また、イチモツの木にいどもうとしているのかにゃ?」


 振り向くと、探していたミケさんがいた。

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