第97話 諦めない気持ちが大切

 2日後。


 ようやく、川の流れが渡れそうな深さと速さになってきた。


 これでやっと、向こう岸へ渡れるぞ。


 ぼくは、れるのは怖くない猫だから、川へ入ってジャブジャブ歩いて渡る。


 渡り終えると、走り回って、お父さんとお母さんを探す。


「ミャ~ッ!」


 お父さん、お母さん、どこにいるの?

     

 ぼくは、ここにいるよ!


 鳴きながら、あちこちを探し回る。


 向こう岸では、いくら探しても、見つからなかった。


 だからきっと、こちら側にいるはずなんだ。


 お父さんとお母さんは、必ず生きていると信じている。


 見つけるまで、絶対にあきらめないぞ!


 すると、ガサガサと草むらが大きくれ動いて、何かが近付いてくる気配けはいがする。


 ヤバい、川を渡れたことが嬉しすぎて、はしゃぎすぎてしまった。


 鳴き声で、天敵てんてきを呼び寄せてしまったかもしれない。


 いや、でも、お父さんとお母さんがぼくを探しに来てくれたのかも。


 期待きたい半分、警戒けいかい半分。


 相手の姿を見たら、すぐ逃げられるように身構みがまえて待つ。


 少しして、草むらから飛び出して来たのは、2匹の猫だった。


「ミャ!」


 お父さん! お母さんっ!


「シロちゃん! 無事だったニャーッ?」


「シロちゃん、生きてて良かったニャッ!」


 ふたりはぼくを見ると、強く抱きめて、ゴロゴロとのどを鳴らしている。


 ぼくもギュッと抱き付いて、うれしくてのどを鳴らした。


 お父さんとお母さんに、サンドイッチされて抱きめられると、スゴく安心した。


 良かった、やっと会えた。


 あったかい、柔らかい……。


 抱き合う、ただそれだけで、どうしてこんなにも幸せなんだろう。


 ぼく達3匹は抱き合ったまま、おたがいの無事と再会を喜び合った。  


 感動の再会をたした後、お父さんとお母さんから、トマークトゥスにおそわれた時の話を聞いた。


 あの時、猫達はみんな、バラバラの方向へ逃げた。


 ぼくが、はぐれてしまったことに気付いても、探しに行けなかった。


 お父さんとお母さんも、逃げるのに必死だったから。


 しばらくすると、トマークトゥスはあきらめて、どこかへ行ったらしい。


 トマークトゥスがいなくなった後、血眼ちまなこに(他のことは忘れて、一生懸命いっしょうけんめいに)なって、ぼくを探し回った。


 いくら探しても、見つからなかった。


 トマークトゥスに、食べられてしまったかもしれない。


 だが、愛する我が子が死んだなんて、信じたくなかった。


 死んでいたとしても、せめて、死体だけでも見つけたい。


 もしかしたら、逃げ切って、生きているかもしれない。


 見つかるまであきらめきれなくて、今までずっと探し続けていたと、ふたりはかたった。


 お父さんもお母さんも、ぼくを心配して、探してくれていたんだ。


 そのことがうれしくてうれしくて、涙が止まらなかった。

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