第98話 家族で食べるごはんは美味しい

 しばらく会わないうちに、お父さんとお母さんは、ずいぶんせた気がする。


「ミャ?」


 お父さんとお母さんは、ぼくとはなれていた間も、ちゃんとごはんを食べていたの?


「シロちゃんが心配で、何も食べられなかったニャ」


「シロちゃんが見つかって、安心したら、おなかがいたニャー」


 お父さんとお母さんは、ぼくを探すのに必死で、何も食べていなかったらしい。


 ぼくを心配するあまり、水以外、何ものどを通らなかったそうだ。 


 生きる為とはいえ、ぼくだけしっかり食べていたのが、申し訳なくなった。


 おなかがいたから、さっそく狩りをしようということになった。


 3匹で獲物えものを探していると、ウマの顔をしたゴリラみたいな動物が、鉤爪かぎづめで枝をたぐり寄せて、木の葉を食べていた。


「あれは、カリコテリウムニャー。あれは、足が遅いから、簡単に狩れるニャー」


 そう言って、お父さんは素早すばやく走り出し、カリコテリウムにおそいかかった。


 ぼくとお母さんも、あとに続いて、お父さんが食らいついたカリコテリウムに飛び付く。


 カリコテリウムは、大きな鳴き声を上げて、激しくあばれる。


 しかし、お父さんは、カリコテリウムののどらいついて、仕留しとめた。


 あらためて、お父さんの強さには、おどろかされる。


 ぼくは、プレーリードッグでも、苦戦くせんしたのに。 


 お父さんは、自分よりもずっと大きな獲物えものでも、あっという間に狩ってしまう。


 やっぱり、お父さんはスゴイ。


 いつも見ていた光景こうけいも、はなれたことで、初めて気付くことがあるんだな。


「さぁ、みんな、食べるニャー」


「いただきますニャ」


「ミャ」


 カリコテリウムは、今まで食べたウマのような草食そうしょく動物と似たような味がした。


 お父さんもお母さんも、「うみゃいうみゃい」と言いながら、お肉を食べている。


 美味しそうに食べるふたりの笑顔がうれしくて、ぼくも笑顔になる。


 ごはんは、ひとりで食べるより、みんなで食べた方が美味しいよね。




 ―――――――――――――


Chalicotheriumカリコテリウムとは?】


 今から2300万年前~360万年前くらいに、生息せいそくしていたと言われている、ウマの祖先そせん


 奇蹄目きていもく(ウマの仲間)だけど、見た目はウマの頭がついたゴリラ。


 奇蹄目きていもくなのに、手足にはするど鉤爪かぎづめが付いている。


 足より手の方が長く、ゴリラみたいににぎった両手を地面につけた歩き方ナックルウォーキングをしていたらしい。


 体長約2~3m、体重は不明。

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