第100話 おしゃべりな猫

 半日もしないうちに、たくさんの猫達がいる集落しゅうらくらしき場所へ辿たどり着いた。


 お父さんとお母さんも、ホッとした顏をしている。


 疲れているふたりを、早く休ませてあげたい。


 ぼくはさっそく、近くにいたキジブチ猫に話しかける。


「ミャ」


 初めまして、こんにちは。


「あらあらまぁまぁ、可愛い仔猫ちゃんニャゴ。ここらでは、見かけない子ニャゴ。どこの子ニャゴ? お父さんとお母さんは? 迷子ちゃんニャゴ?」


 キジブチは、ぼくを見ると、心配そうにぼくの頭をで撫でしながら、質問をかさねてくる。


 なんだか、世話好せわずきなオバサンみたいだ。


「ミャ」


 ぼくは、迷子じゃありません。


 お父さんとお母さんなら、ぼくの後ろにいます。


 3人で旅をしていて、旅の途中とちゅうで、ここに寄ったんです。


「あら~、そうニャゴ? 迷子ちゃんじゃなくて、良かったニャゴ。旅する猫なんて、珍しいニャゴ。まぁ、何もないとこだけど、ゆっくりしていってニャゴ」


 キジブチは、安心したように、ニッコリと笑った。


 どうやら、おしゃべりな猫のようだ。


 たまに、めちゃくちゃ話しかけてくる、おしゃべりな猫っているよね。   


 どんなに話しかけられても、猫語で全然分からないけど、可愛いから良し。


 猫にいっぱい話しかける人も、猫からしたら「何言ってんだ? コイツ」って、思われているのかもね。


 逆に、クールで、めったに鳴かない猫もいるけど。


 猫は気まぐれで、ツンデレが標準装備ひょうじゅんそうびだから。


 猫は可愛い! 可愛いは正義っ!


 猫は、ただそこにいるだけで、存在価値そんざいかちがあると思う。


 せっかく、おしゃべりな猫と会えたから、色々話を聞いてみよう。


「ミャ?」


 ここには、何がありますか?


「あのね、さっきも言ったけど、ここには特に何もないけど、とっても良いところニャゴ。狩りが得意な猫もいっぱいいて、たくさん狩ってきてくれるから、いつもおなかいっぱい美味しいお肉が食べられるニャゴ。それから……」


 キジブチは、「よくぞ聞いてくれました!」とばかりの良い笑顔で、話し始めた。


 へぇ、狩りが得意な猫がいっぱいいるのか。


 お父さんよりも、狩りが上手な猫もいるのかな?


 毎日、美味しいお肉がいっぱい食べられるのは、良いことだ。


 健康けんこうな体を作るには、まず、しっかり食べないとね。


 それにしても、キジブチの話は長いなぁ。


 お父さんとお母さんなんか、キジブチの話が長すぎて、退屈たいくつしたのか、香箱座こうばこずわりで居眠いねむりしていた。

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