第132話 甘えられる幸せ

 ぼく達家族は、旅の疲れをいやす為に、灰白猫の縄張なわばりで、しばらくゆっくりと過ごした。


 縄張なわばりにいる間、毎日、灰白猫の様子を見に行った。


 灰白猫は、一日中寝てばかりで、ほとんど動かない。


 たぶん、病気で体が弱っていて、動くのもしんどいのだろう。


 たまに、ふらりと起き上がると、川へ行って、水をたくさん飲んでいた。


 ぼくが「出来るだけ、側にいて」と言ったから、灰ブチ猫は灰白猫に、ずっとっている。


 灰ブチ猫はいつも、ボサボサになった灰白猫の毛づくろいをしている。 


 おかげで、灰白猫の毛並けなみは、綺麗きれいになった。 


 時々、灰白猫は目を覚ますと、せっせと毛づくろいする灰ブチ猫を見て、幸せそうに笑う。


「灰ブチちゃん、毛づくろいしてくれて、ありがとうナ~ウ」


「おばあちゃん……やっと起きたナォ……」


「おやおや、灰ブチちゃん、そんな顔して、どうしたナ~ウ? 悲しいことがあったら、おばあちゃんに話してナ~ウ」


 灰白猫は、灰ブチ猫を抱きせて、よしよしと、頭と背中をでた。

   

 灰ブチ猫は、灰白猫の毛に顔をめて、思い切り甘えている。


 生きているうちに、たくさん甘えたら良い。


 死んでしまったら、出来なくなってしまうから。


 ふたりのやりとりを見ていると、切なくなるから、だまってその場からはなれた。




 ふたりを見ていたら、ぼくもお父さんとお母さんに甘えたくなった。


 周囲を探すと、お父さんとお母さんは、のんびりと日向ぼっこをしていた。


「ミャ!」


 お父さん、お母さん、ぼくも一緒に日向ぼっこする!


「おや、シロちゃん、灰白さんのお世話はいいのかニャー?」


「ミャ」


 今は、灰ブチさんとお話ししているから、邪魔しちゃいけないと思って。


「じゃあ、シロちゃん、私達と一緒にお昼寝しましょうニャ」


「ミャ」


 お母さんが、「おいでおいで」と、手招てまねきする。


 ぼくは迷わず、お母さんに抱きいた。


 もふもふふわふわの毛に、顔をめて猫吸ねこすいした。


 やっぱりお母さんは、お日様ひさまにおいがする。 


 スリスリして、ゴロゴロとのどを鳴らして、思い切り甘える。


 お父さんとお母さんも、ゴロゴロとのどを鳴らしながら、毛づくろいしてくれた。


 あったかくて、気持ちが良くて、とっても幸せ。


 灰ブチ猫も、今はきっと、ぼくと同じ気持ちだろう。


 もうすぐ、この幸せがなくなるかと思うと、スゴくツラいと思う。


「灰白猫が、少しでも長生きしますように」と、願わずにはいられなかった。

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