第116話 帰るまでが遠足です

 それからしばらくの間、猫達の看病かんびょうと、ぼく達の旅の疲れをいやす目的で、海辺の縄張なわばりで、らすことにした。


 猫達には毎日、アルケオテリウム(イノシシ)やコペプテリクス(ペンギン)などのお肉を食べさせて、ヨモギの薬を飲ませ続けた。


 すると、猫達は少しずつ回復かいふくし、元気を取り戻していった。


「ミャ」


 また、同じように、浜辺にたくさんのお魚が落ちていても、絶対に食べちゃダメですよ。


 食べたら、ぽんぽんおなかぺいんぺいんいたいいたいになりますからね。


 と、言い聞かせれば、猫達は深く反省はんせいした様子で、「もう2度と食べない」と、約束してくれた。


 文字通り、痛い目を見たからな。


 今後、何かあった時の為に、ヨモギやアロエなどの薬草の見分け方や使い方も、猫達に教えておいた。


 これで、この縄張なわばりは安心だ。



 ほとんどの猫達が元気になったところで、ぼく達は旅立つことにした。


 猫達は、みんな「ありがとう」と言いながら、お見送りしてくれた。


 みんなが元気になって、べっこう猫はようやく、ぼくがお医者さんだと信じてくれた。


「仔猫のお医者さん、本当にありがとニィ~。君のおかげで、みんな助かったニィ~」


「ミャ」


 どういたしまして。


 皆さんが、お元気になってくれて、本当に良かったです。


「まさか、お魚を食べて病気になるなんて、思わなかったニィ~。お魚がきらいで、良かったニィ~」


 確かに、その通りだ。


 逆に、魚好きの猫達にとっては、不幸だったとしか言いようがない。


 今回は、たまたま起きちゃった事故みたいなもんだし。


 これがきっかけで、猫達はみんな、魚ぎらいになっちゃっただろうけど。


 可哀想かわいそうだけど、生魚なまざかなを食べるのは、猫の体に良くないからね。


 これからは、美味しいお肉を食べて、生きていって欲しい。


 ぼく達は、猫達に見送られて、べっこう猫がいる縄張なわばりを後にした。



 イチモツの集落しゅうらくへ帰ることを思えば、この縄張なわばりからの旅立ちも悲しくはない。


 ぼく達家族は、来た道とは反対回りで、山のふもと沿って、イチモツの集落しゅうらくへ戻る。


 集落しゅうらくから、ここまで来るのに、何日かかったっけ?


 集落しゅうらくへ帰りくには、何日かかるかな?


 辛いことや大変なことも、たくさんがあったけど、とても有意義ゆういぎな(意味や価値かちがある)旅だったと思う。


 集落しゅうらくから出なければ、永遠に見られなかった景色けしき出来事できごとがいっぱいあった。


 絶対に、3匹そろって、笑顔で集落しゅうらくへ帰るんだ。


 帰るまでが、遠足です。

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