第115話 美味しいお肉

 ヨモギの薬を飲ませたり、背中をでたりして、患者さん達のお世話せわをしていると。


 お父さんとお母さんとべっこう猫が、「うんしょっうんしょっ」と、何か大きなものを少しずつ引きずって、帰ってきた。


「シロちゃん、ただいまニャー」


「シロちゃん、良い子にしてたかニャ?」


「ミャ」


 お父さんとお母さん、おかえりなさい。


 これが、アルケオテリウム?


「そうニィ~。みんなで一緒に、食べるニィ~」


 得意とくいげに、3匹が持って帰ってきたお土産みやげは、大きなイノシシだった。

 

 イノシシは、食べたことがなかったから、どんな味がするのか楽しみだ。


 さっそく食べてみると、豚肉みたいな味で美味しい。


 確か、ブタって、野生のイノシシを家畜化かちくかしたものなんだっけ。


 豚肉の味がするのは、当たり前か。


 食中毒しょくちゅうどくで苦しんでいる猫達も、食欲しょくよくはあるらしく、「うみゃいうみゃい」と食べている。


 え? いきなり、生肉なんか食べて大丈夫?


 ぽんぽんおなかぺいんぺいんいたいいたいで、ゴロゴロピーちゃんおなかをこわしているの時は、食べない方が良いんじゃなかったっけ?


 食べられるなら食べた方が、回復は早いとは思うけど。


 それでも、やっぱり、ちょっと心配。


 気になって、アルケオテリウムに向かって、『走査そうさ』してみる。


対象たいしょう鯨偶蹄目げいぐうていもくエンテロドン科アルケオテリウム』


症状しょうじょう:動物咬傷こうしょうまれた傷)および、掻傷かききずにより死亡』


処置しょち:なし』


 ……うん、死んでいることは、もう分かっているんだ。


 知りたいのは、食べても良いものなのか、なんだけど。


栄養素えいようそ:タンパクしつ脂質ししつ、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、葉酸ようさん、パントテンさん、ビオチン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、セレン、モリブデン』


薬効やっこう疲労回復ひろうかいふく皮膚炎ひふえん貧血ひんけつ動脈硬化どうみゃくこうか精神安定せいしんあんてい免疫力めんえきりょく強化、健康維持けんこういじ、血や肉の生成せいせい毛艶けつやが良くなる』


 あ! そうか、すっかり忘れていた。


 食べ物はなんでも、栄養素えいようそがあるって、家庭科の授業で習ったじゃないか。


 今の猫達に必要な、ビタミンB1も、ビタミンEも入っている。


 猫は肉食動物にくしょくどうぶつなんだから、お肉を食べれば生きられる。


 難しく考える必要なんて、なかったんだ。



 ――――――――――――――――


Archaeotheriumアルケオテリウムとは?】


 今から約3500万年前~2500万年前に生息していたと言われている、イノシシの祖先。


 体の大きさがウシくらいある、大きなイノシシ。


 木の根や木の実も食べるし、他の動物が食べ残した動物の肉も食べる雑食ざっしょく


 体長約2m、体重約150kg

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る