第114話 集団食中毒の原因

 1匹だけ元気そうなべっこう猫に、質問しつもんしてみる。


「ミャ?」


 ここにいる猫達は、お魚をよく食べられるんですか?


「みんな、お肉が好きで、お魚はあんまり食べないニィ~」


 あれ? 『走査そうさ』が、診査しんさ(ケガや病気を、調べること)を間違ったのか?


 いや、でも、『走査そうさ』は、今まで一度も、診査しんさを間違ったことはない。


 べっこう猫は、少し考えた後、思い出したように話し出す。


「そういえば……この前、浜辺にお魚がたくさん落ちていたことがあったニィ~。みんな、そのお魚を食べた後、病気になったニィ~」


 それだーっ!


 人間だった頃に、「大量のイワシのれが、浜辺に打ち上げられた」というニュースを、何度か見たことがある。


 あれは、大きな魚に追われて、逃げ回っているうちに逃げうしなって、浜辺に打ち上げられてしまったイワシ達らしい。


 猫達は、打ち上げられたイワシを、何も知らずに食べてしまった。


 ほとんどの青魚あおざかなは、海から上がると、すぐに弱ってくさりやすい。


 くさりかけのイワシを食べすぎたせいで、食中毒しょくちゅうどくになったってワケか。


 だけど、なんで、べっこう猫だけはピンピンしているのだろう?


 もしかして、べっこう猫だけ、魚を食べなかったのかな?


「ミャ?」


 あなたは、そのお魚を食べましたか?


「お魚は、きらいニィ~」


 やっぱり!


 べっこう猫は、魚ぎらいだったから、助かったんだ。


「ミャ?」


 ちなみに、好きな食べ物はなんですか?


「アルケオテリウムと、コペプテリクスのお肉が、大好きニィ~」


 コペプテリクスは、この間食べた、首の長いペンギン。


 アルケオテリウムは、まだ見たことがない。


「ミャ?」


 アルケオテリウムは、この辺りにいるんですか?


「すぐ近くの森に、たくさんいるニィ~。大きくて美味しいから、みんなと一緒に狩ってよく食べるニィ~」


 美味しいお肉かぁ……良いなぁ、と思ったら、おなかが鳴った。


 ぼくのおなかの音を聞いて、お父さんとお母さんとべっこう猫がクスクスと笑う。


「シロちゃん、おなかすいたニャ?」


「シロちゃんの為に、そのアルケオテリウムを狩ってくるニャーッ!」


「じゃあ、アルケオテリウムがいるところへ、連れてってあげるニィ~。仔猫のお医者さんは、みんなを頼むニィ~」

  

 やる気満々まんまんの3匹の猫達は、そう言い残して、もりへ向かってけて行った。


 残されたぼくは、食中毒しょくちゅうどくの猫達の為に、ヨモギの薬を作り始めた。

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