第85話 新たなお医者さんとの出会い

 新しい縄張なわばりに来たら、必ず聞くことがある。


「ミャ?」


 ここには、お医者さんはいますか?


「ハチ先生がいますニャオ」


 やった! ついに、茶トラ先生以外のお医者さんを見つけたぞっ!


「ミャ?」


 本当ですか?


 同じお医者さんとして、ぜひお話ししたいんで、会わせてもらえませんか?


「では、ハチ先生をご紹介しますニャオ」


 患者さんのお父さんが、ハチ先生というお医者さんがいる場所まで、案内してくれた。


 案内された場所では、ハチワレネコが、地面に寝そべった猫にアロエの汁をっていた。


 ハチワレネコだから、ハチ先生なのか。


 アロエをり終わると、ハチ先生は寝そべっている猫に説明する。


「アロエの汁をめたら、おなかが痛くなりますから、乾くまでは、絶対に毛づくろいはしないで下さいニャフ」


「分かったナ~ォ」


 治療が終わるまで待ってから、ハチ先生に話しかける。


「ミャ」


 初めまして、ハチ先生。


 ぼくは、森の集落しゅうらくからやって来た、シロと言います。


 ぼくもあなたと同じ、お医者さんをしています。


「おや、初めましてニャフ。仔猫のきみも大きくなったら、お医者さんになりたいニャフ? 優しい良い子ニャフ」


 ハチ先生は優しい笑顔で、ぼくの頭をでしてくれた。


 やっぱり、仔猫だから、お医者さんだとは、信じてもらえなかったようだ。


 別に信じてもらえなくても、お医者さんと話せるだけでいいや。


「ミャ」


 ハチ先生は、アロエを傷薬に使っているんですね。


「アロエの汁を傷にれば、すぐ治るニャフ。この辺りの猫達は、みんなよくケガをするから、アロエはかせないニャフ」


 ハチ先生は、薬草にくわしいんですか?


「アロエとヨモギしか、知らないニャフ」


 そうですか……。


 ちょっと、ガッカリ。


 お医者さんなら、色んなことを知っていると思ったけど。


 茶トラ先生なんか、ヨモギしか薬草を知らなかったもんな。


 確かに、ヨモギとアロエがあれば、だいたいのケガや病気は治る。


 この山には、良い薬草がたくさん生えているのに、知らないなんてもったいないなぁ。


 この世界では、薬草にくわしくなくても、なろうと思えば、誰でもお医者さんになれるらしい。


 でも、ほとんどの猫が、お医者さんになる気がない。


 野生生物は、ケガも病気も、寝て治すしかない。


 自然治癒力しぜんちゆりょくで、治らなければ死ぬだけ。


 また、弱っていれば、天敵てんてきおそわれて食われる。 


 それが、自然の摂理せつり(ルール)なんだ。

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