第57話 森のくまさん

「イヌノフグリの集落しゅうらく」の猫達に見送られて、ぼく達は旅立った。


 今は、お父さんとお母さんと仲良く手をつないで、森の中を歩いている。


 頑張がんばった甲斐かいあって、イヌノフグリの集落しゅうらくの猫達は、みんな元気になった。


 さいわいなことに、ぼくが看病かんびょうしている間に、くなった猫は1匹もいなかった。


 ぼくとしては、可愛い猫達が苦しんでいるのを見るのが、えられないだけなんだけど。


 自分の努力がむくわれるって、達成感たっせいかんがスゴイな。


 喜ぶ猫を見るのは、うれしい。


 感謝されれば、もっとうれしい。


「シロちゃん、大活躍だいかつやくだったニャー」


「みんなから、シロちゃんが感謝されると、私達もうれしいニャ」


 お父さんとお母さんにめられると、もっともっとうれしい。


 これからも頑張がんばって、たくさんの猫をすくえたらいいな。


 次の集落を探して歩いていると、少し遠くに黒っぽい動物が動いているのが見えた。


 ある日、森の中、くまさんに出会った。


 たぶん、大きさは3m以上。


 ちょうど、獲物えもの仕留しとめたところらしく、ガツガツと肉に食らいついている。


「くまさん」なんて、可愛い生き物じゃないぞ、あれ。


 お父さんもお母さんも警戒けいかいして、ぼくを抱えて、木のかげかくれる。


 お父さんはひそひそ声で、ぼくとお母さんに話しかけてくる。


「あれは、アルクトテリウムニャー。とっても危ない動物だから、気付かれないうちに逃げるニャー」


「今は、お食事中だから、きっと安全に逃げられるニャ」


「ミャ」


 ぼく達は、音を立てないように、すたこらさっさっさーのさーっと、その場から逃げ出した。


 アルクトテリウムが完全に見えなくなったところで、ぼく達はひそめていた息を、大きく吐き出した。

 

「ふ~……気付かれなくて、助かったニャー」


「無事に逃げられて、良かったニャ。シロちゃんも、そろそろおなかがいたかニャ?」


「ミャ」


「じゃあ、私達でも狩れそうな獲物えものを、探しましょうニャ」


「シロちゃんの為に、頑張がんばって美味しいお肉を狩るニャーッ!」 


 お父さんの狩り好きは、相変わらずだ。


 イヌノフグリの集落では、1日に何度も狩りに行って、毎日クタクタになっていたのに。


 ここ1週間くらいは、体力回復の為に寝っぱなしだった。


 久々に狩りがしたくて、ウズウズしているようだ。


 ぼくだって、看病かんびょういそがしかったから、狩りに出るのは2週間ぶり。


 よ~し! ぼくも頑張がんばって狩るぞっ!


――――――――――――――――


Arctotheriumアルクトテリウムangustidensアングスティデンスとは?】


 今から200万年前くらいに生息せいそくしていたといわれている、史上しじょう最大のくまさん。


 体長約3~4m、体重約1600~1750㎏


 生息せいそく当時は、最大にして最強の陸生りくせい肉食にくしょく哺乳類ほにゅうるいだったらしい。

 

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