第62話 猫の水浴び

 数匹の猫達によって、患者さんは集落へ運び込まれた。


 集落内にいた猫達も、やっぱり、ドクダミのにおいに顔をしかめている。


 ぼくも、自分の体がくさいのは、気になる。


 みんなから、「くさくさい」言われるのは、やっぱりイヤだ。


 川へ飛び込んで、体を洗ってみようかな。


 水で洗ったくらいじゃ、においは落ちないと思うけど。

 

 体に付いたドクダミの汁を洗い落とせば、少しはマシになるんじゃないかな。


 今日は天気が良くてあたたかいし、風もあるから、日向ぼっこしていれば、そのうち乾くだろう。 


 お父さんとお母さんに、「体を洗ってくる」と、ひとこと言ってから、川へ向かった。


 すると、ふたりは慌ててぼくの後を付いてくる。


「シロちゃんが行くなら、私達も行くニャ!」


「シロちゃんはちっちゃいから、流されたり、おぼれたりしたら大変ニャー!」


 ここの川は、川幅かわはばは広いけど、水の流れは速くない。


 しかし川は、急に深くなったり、水の流れに足を取られたりすることがある。


 確かに、ぼくの体はちっちゃいし、ついて来てもらった方が安心か。


 お父さんとお母さんは水が怖いらしく、川には入らず、河原かわらでぼくの水浴びを見守っている。


 集落の猫達は、川へ入って行くぼくを見て、「お前、マジか……」みたいな顔をしている。 


 猫は水を怖がるのが普通だけど、水が平気な猫もいる。


 試しにお風呂へ入れてみたら、温かいお湯が気持ち良くて、お風呂好きになる猫もいるらしい。


 ぼくは元人間だからか、不思議と、水を怖いとは思わないんだよね。


 深いところへ行くのはさすがに怖いので、河原かわら近くのあさいところまでにしておく。


 ドクダミを洗い流す為に、ザブザブと体を洗う。


 ドクダミの汁が付いた手足や、体の前面ぜんめんは、特に念入ねんいりにこすり洗い。


 薬を作ることが多いから、緑色の靴下くつしたいた靴下猫くつしたねこになりがちなんだよね。


 草の汁があちこち付いて、緑色のブチネコにもなっていることも多い。


 緑の靴下猫くつしたねこからシロネコに戻ったところで、もう一度においをいでみる。


 うん、汁を洗い流したら、においもだいぶ落ちた。


 やっぱり、水浴びをすると、身も心もスッキリする。


 毛を乾かすのが、大変だけど……。 


 ―――――――――――――――――


靴下猫くつしたねことは?】


 足毛の模様もようが、靴下くつしたいているように見える猫のこと。


 指先だけタイプ、足袋たび(ショートソックス)タイプ、ソックスタイプ、ハイソックス(ニーソックス)タイプの4種類がある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る