第38話 イチモツの意味

 成猫おとな儀式ぎしき達成たっせいすると、お父さんとお母さんが駆け寄ってくる。


「シロちゃん、おめでとうニャー! シロちゃんなら、絶対出来るって、信じていたニャーッ!」


「シロちゃんがケガひとつなく、無事にりてこられて良かったニャッ!」


 お父さんとお母さんは、ぼくを抱き締めて喜んでくれた。


 集落の猫達からも、「おめでとう」の言葉がおくられた。


 こんなにたくさん祝われて、められたのは初めてかもしれない。


 嬉しすぎて、感動のあまり泣いてしまった。


 長老のミケさんもニコニコ笑いながら、頭をでてくれる。


「シロちゃん、よく頑張ったにゃ。これで、君も立派な成猫おとなとして、認められたにゃ」


 これからは、ひとりで狩りに行くことも、旅へ出ることも出来るんだ。


「そうにゃ。シロちゃん、イチモツのを食べるにゃ」


 え? 猫って、果物くだものは食べられないんじゃなかったっけ?


 あ、そういえば、猫でも食べられる果物はあったな。


 リンゴ、イチゴ、メロン、スイカ、ナシ、モモ、カキなんかは食べられたはず。


 食べられると言っても、大さじ1杯くらいしか、あたえちゃダメだった気がする。


 たくさん食べさせると、おなかを壊したり、病気になったりするらしい。


「イチモツの実は、猫でも食べられる木の実にゃ。『食べると、特別な力をさずかる』という、言いつたえがあるにゃ」


 特別な力?


「食べる猫によって、何が与えられるかは違うにゃ」


 今まで食べた猫達は、どんな力を与えられたの?


「ほとんどの猫は、力が強くなって、足が早くなったにゃ。頭が良くなったり、不思議な力を使えるようになったりする猫もいるらしいにゃ」


 自分の力で登った猫だけに食べることが許された、特別な木の実か。


 どうやらぼくは、「イチモツ」を卑猥ひわいな言葉と、勘違かんちがいしていたようだ。


 もちろん、ぼくだって強くなりたい。


 頭が良くなれば、お医者さんになれる。


 不思議な力っていうのは、魔法のことだろうか。


 ぼくは、どんな力が与えられるのだろうか。


 ぼくは迷わず、イチモツのかじりついた。




――――――――――――――――


【イチモツとは?】


 漢字で「一物いちもつ」と書く場合は、以下の意味がある。


 ・いつまでも、心の中に解消されないで残っている、不信や不満


 ・悪い計画を考えること


 ・ひとつのもの


 ・男の股間こかんにある


 ※放送禁止用語ほうそうきんしようごではないので、放送規制ほうそうきせいのピー音をかぶせたり、○○ふせじにしたりする必要はない。


逸物いちもつ」と書く場合は、「特にすぐれているもの」という意味がある。


 大きな一物いちもつは、逸物いちもつなのかもしれない。

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