ねこねこ仔猫なお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話

第78話 宝の山

　ぼくは、お父さんとお母さんとおてて繋（つな）いで、ハイキング気分で山の周辺調査（しゅうへんちょうさ）をする。

「走査（そうさ）」で調べてみたら、この山には薬草となる雑草が、たくさん生えていた。

　アサガオ、アロエ、オオバコ、ゲンノショウコ、シソ、ドクダミ、ヨモギなどなど。

　小学生の夏休みの宿題として、有名なアサガオ。

　薬としては、下剤（げざい）や利尿薬（りにょうやく）になる。

　アロエは、分厚（ぶあつ）い葉の中にある半透明（はんとうめい）の部分は生（なま）で食べられて、便秘（べんぴ）に効果（こうか）がある。

　葉の汁には消炎（しょうえん）作用があり、火傷（やけど）に良く効（き）く。

　オオバコダイエットで有名なオオバコは、風邪薬や胃腸薬になる。

　ゲンノショウコは、日本三大民間薬（みんかんやく）のひとつで、止血や消炎（しょうえん）作用、胃腸薬になる。　

　アカジソは、解熱（げねつ）、鎮痛（ちんつう）、風邪、喘息（ぜんそく）、便秘（べんぴ）、食欲不振（しょくよくふしん）などに効果がある。

　塩をまぶすと、防腐（ぼうふ）効果や殺菌（さっきん）作用があるので、梅干しと一緒に漬（つ）け込む。

　アオジソは、「大葉（おおば）」と呼ばれ、薬味（やくみ）として有名。

　生の葉は、魚の寄生虫（きせいちゅう）アニサキスに対して殺虫作用があるので、魚の刺身（さしみ）に添（そ）えられていることが多い。

　ドクダミは、万能薬（ばんのうやく）……なんだけど、強い臭いのせいで、めっちゃ使いにくい。

　ヨモギは、ぼくにとって、最（もっと）も身近（みぢか）な万能薬（ばんのうやく）。　　　

　やっぱり、ヨモギを見つけると、安心感がある。

「これさえあれば、なんとかなる」って、気がしてくるんだよね。

　薬草がいっぱい生えている山は、ぼくには宝の山に見えた。

　しかし、とても険（けわ）しい山で、登ろうという気は起（お）こらない。

　良く見ると、黒っぽいヤギらしき動物がいて、岩山を軽々（かるがる）と登っている。

　ロッククライマーでもなければ登れないような崖（がけ）を、どうしてあんなにヒョイヒョイ登れるんだ、ヤギ。　

　お父さんがヤギを見て、残念そうな顔をする。

「あれは、パサンニャー。すばしっこくて、とっても強いし、怖くてなかなか狩れないニャー……」　　

　狩りが得意なお父さんでも、狩れない草食動物がいることを、初めて知った。

　――――――――――――――

【蓬（ヨモギ）とは？】

　みんな忘れていると思うので、軽くおさらい。

　春の若葉は、草餅（くさもち）やヨモギパンなどにすると、美味しく食べられる。

　生の葉は、叩き潰（つぶ）してペースト状にすると、傷薬になる。

　抗菌化物質（こうきんかぶっしつ）を含（ふく）み、免疫力強化（めんえきりょくきょうか）、抗（こう）ガン作用、造血作用（ぞうけつさよう）、浄血作用（じょうけつさよう）など、たくさんの薬効（やっこう）がある。

【Anisakis（アニサキス）とは？】

　魚の体に、勝手に入り込んで棲（す）みつく寄生虫（きせいちゅう）。

　アニサキスが入っている刺身を食べてしまうと、ポンポン（おなか）ペインペイン（いたいいたい）になる。

【Pasang（パサン）とは？】

　岩場や崖（がけ）を好（この）んで生息（せいそく）するヤギの祖先（そせん）で、別名（べつめい）「野山羊（のやぎ）」

　草食性で、雑草（ざっそう）をたくさん食べる。

　すばしっこくて（アクティブ）、（＆）超攻撃的（アグレッシブ）。

　牧場で飼育（しいく）されている現在のヤギは、家畜化（かちくか）されて大人しくなったパサンの子孫（しそん）。

　体長１２０～１６０ｃｍ、体重８０～１１０ｋｇ