第118話 狩りはチームワークが大事

 アルケオテリウム(イノシシ)の森は、思った通り、半日はんにちとかからずに、出ることが出来た。


 森の中は居心地いごこちが良かったので、森から出るのが、ちょっとしい。

 

 でも、この山を越えれば、イチモツの集落しゅうらくがある森へ帰れるんだ。


 山と山の間に谷があり、谷には川が流れている。


 そういえば、川にも魚はいるんだよな。


 確か、川魚かわざかなにも、猫が食べたらダメな成分せいぶんが入っていたはず。


 中までしっかり火を通せば、食べられるようになるらしいけど。


 猫は、料理が出来ない。


 猫が生魚なまざかなを食べすぎるとどうなるかは、べっこう猫の縄張なわばりで、思い知った。


 病気になってまで、食べたいとは思わない。 


 美味しそうだが、食べちゃいけない、食べられない。


 残念ざんねんだけど、あきらめよう。


 そんなことを考えながら、ぼく達家族は、川に沿って歩いて行く。


 しばらく行くと、猫達が狩りをしているところに、くわした。


 シカのような動物を、数匹で追いかけ回している。


 1匹がシカの足に飛びかかると、シカが大きくころび、続いて猫達も飛びついて、素早すばや仕留しとめた。


「お~、スゴイニャー! みんな、上手ニャーッ!」


 狩りが得意なお父さんも、猫達の見事みごとな狩りを見て、感心している。


 狩りは、チームワークが大事だからね。


 猫達はさっそく、仕留しとめたばかりのシカを、美味しそうに食べ始めた。


 ぼく達家族は、さっき、アルケオテリウムを食べたところなので、おなかは空いていない。


 それに、猫達が仕留しとめた獲物えものを、見ず知らずのぼく達が食べるのも、おかしな話だ。


 ぼく達は、猫達の食事が終わるのを待った。


 ひとしきり食べて、残りをお土産みやげにしようと運び始めた猫達に、話しかける。


「ミャ」


 初めまして、こんにちは。


「こんにちはにゃん。初めて見る子にゃん、どこの子にゃん?」


 最初にシカに飛びかかった、リーダーらしきヒョウがら猫は、ぼくを見て、首をかしげた。


「ミャ」


 ぼくは、お父さんとお母さんと3匹で旅をしています。


 あなたたちの狩り、見ていました。


 とってもカッコ良かったです。


 ぼくのお父さんも、めていましたよ。


「そ、そう? まぁ、オレくらいになれば、このくらい余裕よゆうにゃん。あ、良かったら、オレらの縄張なわばりに来るにゃん? カッコイイオレの話を、聞かせてあげるにゃん」


 ヒョウがら猫は、められるのに弱いらしい。


 ちょっとめたら、めちゃくちゃ良い笑顔で、縄張なわばりへ招待しょうたいしてくれた。


 お父さんとお母さんは、他の猫達と一緒に、お土産みやげを運ぶのを手伝っていた。

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