第119話 頼れる兄貴

「オレの名前は、ヒョウにゃん。気軽に、ヒョウ兄貴あにきと呼んでくれにゃん。お前は?」


「ミャ」


 ぼくは、シロです。


 よろしくお願いします、ヒョウ兄貴あにき


「そうか、シロちゃん。良い名前にゃん。こちらこそ、よろしくにゃん」


 ヒョウ兄貴あにきは、ニコニコ笑って、ぼくの頭をでした。


 どうやら、キジブチとは違うタイプで、面倒見めんどうみが良い猫のようだ。

 

 いわゆる、兄貴肌あにきはだ行動力こうどうりょくがあって、たよりがいのあるタイプ)。



 ヒョウ兄貴あにきの案内で、縄張なわばりにいた。


「シロちゃん、ここが、オレらの縄張なわばりにゃん。お~いっ、お前ら~! お土産みやげ持って帰ってきたにゃ~んっ!」


 ヒョウ兄貴あにきが、声を張り上げると、縄張なわばり中の猫達が集まって来た。


 お父さんとお母さんと、狩り仲間の猫達が持って帰ったお土産みやげを、猫達が大喜びで食べ始めた。


 ヒョウ兄貴あにきは、食べる猫達をうれしそうにながめながら、ぼくにも声をかけてくる。


「シロちゃん、お前も、食べて良いにゃん」


「ミャ」


 ぼく達は、さっき食べたばかりなので、おなかは空いていません。


 ところで、この縄張なわばりには、お医者さんはいますか?


「お医者さん? ここには、そんなものはいないにゃん。え? もしかして、シロちゃん、お前、どこか痛いところでもあるにゃん? なんで、早く言わないにゃんっ?」


 そう言って、ヒョウ兄貴あにきは心配そうに、ぼくを抱き上げた。


 ぼくはあわてて、否定ひていする。


「ミャ」


 いえ、ぼくは大丈夫です。


 というか、ぼくがお医者さんなんです。


「シロちゃんが、お医者さんにゃん? そうかそうか、シロちゃんはお医者さんなのにゃん。偉いにゃん」


 ヒョウ兄貴あにきはホッとした顏で、ぼくをろすと、頭をでしてくれた。


 あ、これ、子供相手だから、否定ひていはしないけど、全然信じていない時の反応だ。


 まぁ、いつものことだから、れているけどね。


「ミャ?」


 それで、ここにケガや病気で苦しんでいる猫は、いませんか?

  

「ケガなんて、狩りをしていれば、しょっちゅうするにゃん。ほら」


 そう言って、ヒョウ兄貴あにきはすり切れた肉球を見せてくれた。


 確かに、狩りでケガをしない方がむずかしい。


 逃げる獲物えもの全力ぜんりょくで追いかけ回し、飛びかかる。


 獲物えものあばれて、反撃はんげきされたり、振り落とされたりもする。


 狩りが上手なお父さんだって、小さなケガなら、しょっちゅうしている。


「このくらい、めれば、すぐ治るにゃん」


 ヒョウ兄貴あにき得意とくいげな顔で、肉球をペロペロとめた。

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