第31話 心残り
人間だった頃の夢を見た。
お父さんは、有名な大学病院のお医者さんで、「忙しい」「疲れた」が
ほとんど家にいなくて、家にいる時は寝ていることが多かった。
でもたまに、「お母さんには、ないしょだぞ」と言って、ぼくが欲しかった猫グッズを買ってくれた。
お父さんも実は猫が大好きで、猫グッズを集めているんだって。
もらった猫グッズは、お母さんに見つからないように、通学カバンに隠した。
お母さんは、「勉強しろ」が
ぼくが家にいる間、お母さんはずっとぼくを
「アンタに勉強させることが、あたしの仕事だから」と、言っていた。
ごはんとか掃除とか洗濯とか、家事は全部、おばあちゃんがやっていた。
ごはんとお風呂とトイレと寝る時以外は、お母さんが付きっ切りで勉強させられた。
学校だけが、ぼくに与えられた自由な時間だった。
学校では、いつも猫好きな友達と遊んでいた。
猫を飼っている友達から、猫の写真や動画をたくさんもらった。
大好きな猫のことをもっと知りたくて、図書館で猫の本をいっぱい読んだ。
そしたら、友達から「
でもぼくは、猫博士より、猫のお医者さんになりたかった。
だって、猫のお医者さんになれば、ケガや病気で苦しんでいる猫を助けることが出来るから。
たくさんの猫と、猫好きな飼い主さんとも、知り合いになれるし。
「猫のお医者さんになりたい」って言ったら、お父さんは喜んでくれた。
お母さんは、めちゃくちゃ怒った。
「猫の医者なんて、絶対許さない! アンタは、誰もが
少しでも自分の思う通りにならないと、お母さんは
お母さんの気が済むまで、何時間もお
そして、お
「あ~あ……時間のムダだった。怒られたくなければ、反省してもっと勉強しなさい」
時間のムダだと思うんだったら、何時間もお
言い返したら、もっと怒られるって分かっていたから、黙っていることしか出来なかった。
ぼくが死んだ後、お父さんとお母さんとおばあちゃんは、どうなったのかな?
それだけが、ずっと心に引っ掛かっている。
ぼくは、猫に生まれ変わって幸せだから、みんな心配しないでね。
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