第10話 猫の巣穴

 お腹がいっぱいになったら、急にねむくなった。


 それもそのはず、猫は1日平均12~16時間も寝る。


 生後5ヶ月未満の仔猫は、なんと20時間以上も寝ると言われている。


 下手したら、食事以外は、1日中寝っぱなしなんてこともあるらしい。


 仔猫のぼくが、こんなに起きて活動している方がめずらしいんだ。


 眠くてふにゃふにゃしているぼくを見て、シロブチとサバトラが小さく笑う。


「シロちゃん、そろそろ、おねむかニャ?」


「狩りで疲れて、眠いニャー。みんなで、おうちに帰って寝るニャー」


 そう言いながら、サバトラがぼくを抱っこしてくれた。


 抱っこなんて、いつ振りだろう。


 親に抱っこしてもらえるのは、小さな子供のうちだけ。


 小学校高学年以上になったら、抱っこしてもらえなくなるのが普通。


 久々のぬくもりがうれしくて、サバトラの胸にしがみつく。


 仔猫になった今なら、甘えたい放題だ。


 のどをゴロゴロ鳴らして甘えるぼくを見て、ふたりがおかしそうに笑う。


「あらあら、シロちゃんったら、甘えんぼさんニャ」


「まだまだ、赤ちゃんなんだニャー、可愛いニャー」


 しばらくすると、地面にられた穴の前にたどりいた。


 周りを見れば、同じような穴がいくつもある。 


 どうやらここが、この集落しゅうらくらす猫達の巣穴すあならしい。


 野生の猫は、地面に穴を掘り、中に柔らかい枯草かれくさめて、巣を作るという。    


 初めて見る猫の巣穴に、軽く感動する。


 シロブチとサバトラが巣穴に入り、一緒に丸くなる。


 ぼくはふたりにサンドウィッチされる形で、あったかくて気持ちが良い。


「おやすみなさいニャ」


「おやすみニャー」


「ミャ」


 ああ、なんて幸せなんだろう。


 ふわふわもふもふの猫毛に包まれて、あっという間に、眠ってしまった。

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