第11話 可愛さの究極体

 起きても、やっぱり仔猫だった。


 昨日の出来事できごとは全部、ぼくの理想りそうが生み出した夢かと思っていたけど。


 柔らかくてあったかい猫毛に包まれて、とても幸せな目覚めだ。


「何時になったから起きなきゃ」とか、「学校へ行かなきゃ」とか、考えなくて良い。


 勉強もしなくて良いし、親や先生に怒られることもない。


 猫になったら、好きなだけ寝ていられる。


 猫は、食って寝るのが仕事。


 素晴らしきかな、猫の生活。


 でも、ずっとダラダラ寝ているのも、つまんないな。


 寝っぱなしは、きる。


 外はもう明るいみたいだし、そろそろ起きよう。


 猫に生まれ変わっても、精神せいしんは、まだ人間のままなんだな。


 どうせ、仔猫の体力なんだから、疲れたら勝手に眠くなる。


 眠くなったら、その辺で寝落ちしたってかまわないんだし。


 親猫達の間から、のそのそとい出す。


 親猫達は、まだ気持ちよさそうに眠っている。


 猫の寝顔って、なんでこんなに可愛いんだろう。


 猫って、可愛さのかたまりだよね。


 猫は、どこから見ても可愛い。


 横から見ても、可愛い。


 後ろ姿も、可愛い。

 

 シルエットでも、可愛い。


 パーツひとつひとつが、全部可愛い。


 仕草しぐさも、可愛い。


 鳴き声も、可愛い。


 全てが、完璧かんぺき


 猫の可愛さを語り出したら、キリがない。


 ここまで可愛さの究極体きゅうきょくたいを生み出した神は、天才だと思う。


 よし、猫の可愛さを堪能たんのうしたところで、巣穴すあなから出よう。


 さすがに、ひとりで集落しゅうらくの外へ出るのは危なそうだから、やめておこう。


 猫達が集落を作って暮らしているのは、森が危険だからだ。


 きっと、森には、未知みちの生物達がうじゃうじゃいるんだ。


 ちっさい仔猫じゃ、すぐに殺されちゃう。


 集落の中なら、ひとりで歩いても大丈夫だろう。 


 ぼくは、この世界に来たばかりで、集落の中でさえ、何があるのか知らない。

 

 まずは、集落を見て回ろう。


 たくさんの猫に話し掛けて、色んなことを教えてもらおう。


 仔猫が話し掛けても、誰も警戒けいかいしないだろうし。


 どうしても困った時には、そのへんでミャアミャア泣いていれば、誰かが助けてくれるだろう。

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