第12話 猫の集落

 現在地点げんざいちてんである、猫の巣穴すあな


 ここは集落しゅうらくはしっこで、すぐ側にそびえたつ巨大な岩山が、ちっぽけなぼくを見下ろしている。


 垂直すいちょく岩壁いわかべは、プロのロッククライマーでもなければ、登れそうにない。


 この岩山があるから、猫達は安心して眠ることが出来るって訳か。


 巣穴を後にすると、開けた広場に出る。


 集落内の猫達は、自由気ままにのんびりと過ごしている。


 これなら、誰に話し掛けてもよさそうだ。


 適当てきとうに、その辺にいる猫に話し掛けてみよう。


 すぐ近くに、昨日、お医者さんのところにいたサビネコがいた。


 名前は、サビさんとかいったっけ?


「ミャ」


「おや、シロちゃん。ひとりで、おさんぽかニャア?」


 ぼくはサビさんを知らないけど、向こうはぼくを知っていた。


「ああ、そうそう。シロちゃん、お腹はいてないかニャア?」


 言われてみれば、起きてから何も食べていない。


 ぼくは仔猫だから、自分で狩りをすることが出来ない。


 誰かが狩ったものを、分けてもらうしかない。


「ミャ」


「シロちゃんは、腹ペコさんなのニャア? 今朝った、ガストルニスがあるけど、食べるニャア?」


 ガストルニス? また知らない名前が出てきた。


 頭文字イニシャルGとか、気持ち悪い虫とかじゃなければ、食べられる。


「大丈夫ニャア。ガストルニスは、美味しいニャア」


 そう言って、サビさんが出してくれたのは巨大な鳥だった。


 見ためは、毛深けぶかいダチョウ。   


 鳥なら、人間の頃も食べていた。


 お祭りの屋台やたいで、めずらしいダチョウの肉を食べたことがある。


 ガストルニスは、どんな味がするんだろう。


 食べようとすると、サビさんに止められる。


「あ、ちょっと待つニャア。羽根はねを、取ってあげるニャア」


 サビさんは親切に、鳥の羽根をむしってくれた。


「これで良しニャア。さあ、一緒に食べるニャア」


 そう言って、サビさんが食べ始める。


 ぼくも、ありがたくいただく。


 美味しい! 鳥肉の味だっ!


 そうと分かれば、抵抗なく食べられる。


 ぼくは、お腹いっぱい鳥肉を食べた。


 ガストルニスはガチョウサイズだから、ふたりじゃ食べきれない量だ。


「残りは、昨日お世話になったお医者さんに、おすそ分けするニャア」


 お医者さんか。


 きっと集落の中でも、頭が良い猫に違いない。


 聞けば、色々教えてくれるかもしれない。


 ぼくは、サビさんに付いて行くことにした。




 ―――――――――――――――――――――――――

Gastornisガストルニスとは?】


 今から6600万年前くらいに生息せいそくしていたと言われている、飛べない鳥。


 体長は、ダチョウと同じ250㎝くらい。


 分かりやすく例えると、「ファイナルファンタジー」に登場する「チョコボ」


 体重が約500㎏もあり、重すぎるせいで足が遅い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る