第140話 新しい水飲み場を作ろう

 猫は文字を書けないし、読めない。


 何かを伝えようと思ったら、実際に、目の前でやってみせて、口頭こうとう(口でしゃべる)で教えるしかない。


 ぼくは、木のぼうを一本拾い、地面に線を引いて行く。


 線を引くぼくを見て、猫達は、不思議そうに首をかしげた。


「シロちゃん、何してるニャー?」


 お父さんが質問してきたので、答える。


「ミャ」


 みんなが、水を飲めるように、集落しゅうらくに川を引くんだよ。


 皆さんにも、手伝って頂きたいのですけど、お願い出来ますか?


「もちろん、シロちゃんのたのみなら、なんでもやるニャーッ!」


 お父さんが張り切り出すと、他の猫達も「ニャーッ!」と、やる気満々きまんまんの声を上げた。


「ミャ」


 皆さん、ありがとうございます。


 では、まず、ぼくが引いたこの線に沿って、みぞっていって下さい。


「こんな感じで」と、水路すいろって見せた。


「ミャ」


 このみぞを、集落しゅうらくまでり進めて、川を作ります。


「そのくらい、お安い御用ごようニャーッ!」


 猫達にも分かりやすいように、ひとつずつ説明しながら、やって見せた。


 猫達は、ぼくの指示しじしたがって、川から水路すいろっていく。


 集落しゅうらくでくつろいでいた猫達も、ぼく達の土木工事どぼくこうじ(道や川などを作る作業さぎょう)を見て、「なんニャなんニャ?」と、集まって来る。


「ミャ?」


 皆さんに教えて頂きたいのですが、この集落しゅうらくで、一番日当ひあたりの良い場所はどこですか?


「ここニャン」


 日向ぼっこが大好きな猫達は、あったかい場所を知っている。


 数匹の猫達が、その場所を教えてくれた。


 地面をさわってみると、確かにあったかい。


 ここに池を作れば、太陽光で水があったまるはずだ。


「ミャ」


 ここに、水飲み場の池をりましょう。


「このくらいで」と、棒で丸く線を引いた。


 水飲み用の池なので、大きな穴じゃなくて良い。


 丸まった成猫おとな1匹分くらいの大きさがあれば、充分じゅうぶんだと思う。


 猫達に、池用の穴をってもらい、水飲み場が完成。


 引き続き、排水路はいすいろり進めてもらい、下流かりゅうの川へつなげた。


 半日くらいで、工事は終わった。


 あとは、川の水を引くだけだ。


 川と水路すいろつなげると、水が流れ出した。


 猫達は「ニャーッ!」と歓声かんせいを上げて、水路を流れる水を追いかけていく。


 池に水がまるのは、ちょっと時間がかかった。


 池の水がいっぱいになると、排水路はいすいろへ水が流れて、川へ戻っていく。


 一応、予想通りのものが出来たかな?


 作ったばっかりだから、今は水が茶色くにごっているけど。


 しばらくすれば、綺麗きれいな水に入れわっていくだろう。


 あとは、池の水があったまってくれるかだな。

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