第63話 毒虫の恐怖

 ケガの治療は、傷を洗う必要がある為、集落の猫達には河原かわらに集まってもらった。


「川で傷口を洗う」と言うと、水が苦手な集落の猫達はビビり散らかしていた。


「ケガを治す為だから」と言い聞かせれば、渋々ながら受け入れてくれた。


 ケガをした猫がたくさんいるので、薬もたくさん作らなくてはならない。


 今回使う薬草は、キランソウというケガに効く薬草。


 薬の作り方は、いつも通り、葉を石で叩いてつぶすだけ。


 ぼくひとりでは手が足りないので、お父さんとお母さんにも薬作りをお願いする。


「ミャ」


「この葉っぱも、いつもみたいに叩けば良いんニャー?」


「薬作りも、れてきたニャ」


 お父さんとお母さんには、毎回、大量の薬作りを頼んでしまって、申し訳ない。


 集落の猫達は「薬」と聞いて、「あのくさいヤツか?」と、警戒けいかいしていたようだけど。


 キランソウは、草特有の青臭あおくささはあるけれど、ドクダミと比べれば、においはずっと少ない。

 

 ドクダミのにおいがしなかったので、安心したようだった。


 どんなに効く薬であっても、あの強烈きょうれつにおいにはえられないもんな。


 猫達に1列に並んでもらって、1匹ずつ走査そうさして、症状しょうじょうに合った治療ちりょうをしていく。


 幸いなことに、重傷の猫はいなかったので、薬を塗ったら自然治癒力しぜんちゆりょくで寝れば治る。


 走査そうさしてみたら、どの猫も2週間くらいで治ると分かって、ひと安心。

  

 全員治療が終わったところで、集落のおさ(リーダー)だと言う猫に話を聞いてみる。


「ミャ?」


 なんでこんなにたくさんの猫達が、狩りでケガしたのですか?


「この辺りには、危険な虫や毒を持つ虫がいっぱいおってナォ。狩りをしていると、刺されるナォ」


 確かに、治療していた時に気付いたけど、毒虫に刺された猫が多かった。


 可哀想に、刺された場所がミミズれみたいに、赤くれあがっていた。


 痛みと共にかゆみもあるらしく、多くの猫が傷口をいてしまい、傷を悪化あっかさせていた。


「虫に刺されて、痛がったりいたりしているうちに、獲物えもの反撃はんげきされて、逃げられるナォ」


 なるほど、そういうことか。


 たぶん、この近くに、毒虫達が好む植物が生えているんだ。


 今までも、毒虫に刺された猫達がたくさんいたに違いない。


 治療しただけじゃ、根本的こんぽんてき解決かいけつにはならない。


 はてさて、どうしたもんか。 

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