第136話 困った集落の長、再び

「おおっ、仔猫のお医者さん、また再び、この集落しゅうらくおとずれてくれるとは、とてもありがたいナォ! また、我々を助ける為に活躍かつやくしてくれることを、期待きたいしているナォッ!」


 ぼくが来たと聞きつけて、集落しゅうらくおさけつけてきた。


 集落しゅうらくおさは、期待きたいちたキラキラした目で、ぼくを見つめてくる。


「もうはなさない」とばかりに、ぼくの手を両手でギュッとにぎりしめた。


 正直、この集落しゅうらくおさは、苦手なんだよなぁ……。


 ぼくが集落しゅうらくなやみを、全部解決かいけつしちゃったもんだから、たよりっきりになっちゃったんだ。


 依存心いぞんしん(何かにたよる気持ち)が強いヤツは、ちょっとでも優しくすると、こうなるんだよね。


 ぼくは、困っている人がいたら、誰でも助けちゃう性格だから、こういうことがよくあるんだ。


「助ける相手を選べ」って、良く言われるけど。


 お医者さんは、相手が誰であろうとも、ケガや病気で苦しんでいる患者さんがいたら、助けなければならない。


 それが、お医者さんとしての使命しめい(とても大事な仕事)だから。


 集落しゅうらくおさは、ぼくがいなくなったら、変わってくれるかと思っていたんだけど、あまり変わらなかったようだ。


 それとも、ぼくがまた来ちゃったから、元に戻っちゃったのかな。


 なつかしさで、つい立ちっちゃったけど、間違まちがいだったかも。


 実は、この集落しゅうらくの猫達が、安全にらせているかどうか、ずっと気になっていたんだよね。


 キランソウの群生地ぐんせいち(たくさん生えている場所)まで、猫達をみちびいて来たのはぼくだから、責任せきにんを感じている。


 もし、ここに連れてきたせいで、猫達が苦労くろうしているとしたら、責任せきにんを取らなくてはならない。


「ミャ?」


 ここでらし始めて、いかがですか?


 困っていることは、ありませんか?


「いやはや、ここに来てからというもの、毒虫にされる被害ひがいもなくなり、ケガも病気もキランソウで治せるようになって、みんな、元気にらしているナォ。それもこれも全部、君のおかげナォ」


 集落しゅうらくおさは、ニコニコと笑いながら答えた。


 どうやら、ここの心地ごこちは良いらしく、猫達は平和にらせているようだ。


 それを聞いて、心の底から良かったと安心した。

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