第135話 キランソウの集落

「この森は、久し振りでうれしいニャー」


「やっぱり、ここは良いところニャ」


「ミャ」


 ぼくとお父さんとお母さんが、仲良くおててつないで、おしゃべりしながら、イチモツの森の中を歩いていると。


 突然とつぜん、『走査そうさ』が発動はつどうした。


対象たいしょう:シソ科キランソウ属キランソウ」


薬効やっこう高血圧こうけつあつ咳止せきどめ、解熱げねつ健胃けんい止血しけつ鎮痛ちんつう火傷やけど、切り傷、毒虫の刺傷さしきずれ物、汗疹あせも打撲だぼく


 キランソウ?


 ぼく達は今、ケガや病気はしていないはずだけど。


 見れば、足元あしもとい緑色の草が、たくさん生えていた。


 確か、初めて見つけた時は、青紫色あおむらさきいろの花がいていた。


 花の時季じきが終わって、今は緑色の葉しか残っていない。


 キランソウか……なつかしいな。


 毒虫にかこまれていた集落しゅうらくんでいた、猫達を助けた時に見つけた薬草だ。


 最初、虫刺むしさされには、ドクダミを使ったんだけど。


 あまりにもくさすぎて、猫達から大不評だいふひょうだった。 


 いや、ドクダミそのものは、とても優秀ゆうしゅうな薬草ではあるんだよ?

 

 だけど、強烈きょうれつ正露丸せいろがんみたいなにおいがキツすぎて、二度と使う気になれなかった。


 ドクダミの代わりに見つけたのが、キランソウだった。


 あの時、助けた猫達は、今も元気でらしているだろうか。


 そういえば、キランソウがたくさん生えていた場所に、猫達を移住いじゅうさせたんだったな。


 ってことは、この近くに、その猫達の集落しゅうらくがあるはず。


 確か、『走査そうさ』は、近くにケガや病気の猫がいれば、その場所まで案内してくれるよね?


 頼むぞ、『走査そうさ』!


対象たいしょう:食肉目ネコ科ネコ属リビアヤマネコ』


症状しょうじょう化膿性皮膚疾患傷が細菌感染している


処置しょち:傷口洗浄せんじょう後、抗菌薬こうきんやく抗炎症薬こうえんしょうやく塗布ぬりつける


 どうやら、ケガをしている猫が、この近くにいるようだ。


 しかも、化膿かのうまでしている。

 

 ケガをした後、すぐ傷口を洗えば、化膿かのうすることはない。 


 でも、この猫は、何もしなかったから、細菌感染さいきんかんせんして、傷を悪化あっかさせてしまったんだ。


 じゃあ、その猫がいるところまで、案内してくれ。


直進ちょくしん520m先、右折うせつ80m』


 カーナビみたいな案内された。


走査そうさ』の案内にしたがって歩いて行くと、たくさんの猫達がいる集落しゅうらくへたどりいた。  


 集落しゅうらくの猫達は、ぼくを見ると、ニャーニャーと声を上げる。


「あ、仔猫のお医者さんニャニャ!」


「えっ? 本当ニャオ! また来てくれたニャオ?」


「また会えて、うれしいニャ~ンッ!」


 集落しゅうらくの猫達は、ぼく達を歓迎かんげいしてくれた。



――――――――――


化膿かのうとは?】


 傷口から、化膿菌かのうきんが入ってきて、炎症えんしょうを起こしている状態。


 強い痛みがあり、傷の周りが赤くれて、白いうみが出る。

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