第145話 イヌノフグリの集落

「ミャ?」


 あの、どこかでお会いしましたっけ?


「覚えてないかにゃあ? 以前、この集落しゅうらくの猫達が、全員病気になった時に、仔猫のお医者さんが助けてくれたにゃあ」


 あ! 思い出したっ!


 ここは、イチモツの集落しゅうらくを出て、初めておとずれた「イヌノフグリの集落しゅうらく


 確か、猫風邪ネコカリシウイルス感染症集団感染しゅうだんかんせんした集落しゅうらくだったはず。


 クロブチは、イヌノフグリの集落しゅうらくおさだ。


「ミャ」


 どうも、クロブチさん、おひさしぶりです。


 その後、皆さん、お元気でおごしですか?


「元気も何も……今、この通り、みんな、病気で苦しんでいるにゃあ……」


 クロブチは、鼻をグズグズいわせて、たまにせきやくしゃみをして、息をするのも苦しそうだ。


「ミャ」


 あ、そうですよね、すみません。


「教えてもらった、ヨモギの薬を飲んだんだけど、全然かなかったにゃあ……」


 そりゃ、そうだ。


 ヨモギの花粉が、原因の花粉症かふんしょうなんだから、かないどころか、悪化あっかするだけだ。


「ミャ」


 残念ざんねんながら、この病気に、ヨモギはきません。


 でも、大丈夫です。


 この病気にく、新しいお薬を用意しました。


「本当にゃあ? ありがとにゃあ! じゃあ、みんなを呼ぶにゃあっ!」


 クロブチは大喜びで、集落しゅうらくの猫達を呼び集めてくれた。


 ローズヒップをつぶして、水でうすめたものを、猫達に飲ませた。


 思った通り、みんな、「っぱいニャーッ!」と、イヤがった。


 猫は、酸味さんみ苦味にがみが苦手なんだ。


 これは、「くさったものや、毒を食べない為に重要じゅうよう味覚みかく」と、言われている。


 猫達に、「飲まないと、病気が治りませんよ」と言い聞かせて、我慢がまんして飲んでもらった。


 アレルギー性皮膚炎せいひふえんを起こしている猫達には、アロエの汁をった。


走査そうさ』によると、アロエの汁は目薬めぐすりとしても使えるそうだ。


 花粉症かふんしょう炎症えんしょうを起こした目に、くらしい。


 アロエの汁は即効性そっこうせいがあり、るとすぐに、痛みやかゆみが引く。


 最強の消炎鎮痛剤しょうえんちんつうざいだな、アロエ。


 人間だったら、飲んだり食べたりも出来るんだけど、猫の体には毒なんだよね。


 猫がアロエを飲むと、ゴロゴロおなかをピーちゃんこわすになっちゃうんだ。


 だから、「アロエをった場所は、絶対にめないように」と、言い聞かせた。


みんな、「痛みやかゆみがった」と、よろこんでいる。


 良かった良かった。


 これで、花粉症かふんしょう症状しょうじょうは、かなりラクになるはずだ。


 ぼくは、「病気が治るまで、毎日、ローズヒップの薬を飲み続けて下さい」と、つたえた。


 これを聞いた猫達は、「このっぱいのを、毎日、飲まなきゃいけないのか……」と、ゲッソリしていた。

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