第147話 「ただいま」と言える幸せ

 花粉症かふんしょう対策たいさくをした後、集落しゅうらくの猫達に、薬草の見分け方と薬の作り方を教えた。


 みんなも、薬を使えば病気が治ると分かっているから、ちゃんと覚えてくれた。


 今回のように、ヨモギの花粉症かふんしょうに、ヨモギを使っちゃうことがないように、病気に合わせた使い方も教えておいた。


 万能薬ばんのうやくのヨモギが、花粉症かふんしょう悪化あっかさせるなんて、考えもしなかった。


 ぼくもお医者さんとしては、まだまだ未熟みじゅくだな。


 もっとたくさん薬草を知って、もっといっぱい患者かんじゃさんをすくって、お医者さんとしての経験けいけんまなきゃ。


 その後、イヌノフグリの集落しゅうらくでゆっくりと休み、旅の疲れをいやした。


 体力が回復したら、いよいよイチモツの集落しゅうらくへ向けて出発だ。


 旅立ちの日、多くの猫達がお見送りに集まってくれた。


「今回も、仔猫のお医者さんには助けられたにゃあ。本当にありがとにゃあ」


「仔猫のお医者さんは、イチモツの集落しゅうらくの猫なのニャン?」


「こちらからも、イチモツの集落しゅうらくに行きますニャーン」


「ミャ」


 ぼくもイチモツの集落しゅうらくへ帰ったら、たぶん、しばらくは旅に出ないと思います。


 何か困ったことがあったら、イチモツの集落しゅうらくへ来て下さい。


 ぼくがいない時には、茶トラ先生をたよって下さい。


「分かったにゃあ。じゃあ、気を付けて、帰ってにゃあ」


「ミャ」


 ありがとうございます。


 皆さんもどうか、お元気で。


 たくさんの猫達に見送られて、イヌノフグリの集落しゅうらくをあとにした。


 見上げれば、イチモツの木が、かなり近くに見えている。


 イチモツの集落しゅうらくまで、あともうちょっとだ。



 イヌノフグリの集落しゅうらくを出た後は、危険生物と出会うこともなく、順調じゅんちょうに旅を続けた。


 そして、数日後。


 ついに、イチモツの集落しゅうらくへ、帰って来ることが出来た。


 なつかしさから来るよろこびで、胸がいっぱいになる。


「ミャッ!」


 みんな、ただいまっ!


「あ、シロちゃんニャア! おかえりなさいニャアッ!」


 ぼくに気付いたサビさんが、大喜おおよろこびでって来て、ぼくを抱きしめた。


「シロちゃんが、無事に帰って来てくれて、本当に良かったニャア。とっても嬉しいニャア。ずっとずっと、心配していたニャア」


 サビさんは、ポロポロと涙をこぼして、「良かった良かった」と何度も言って、ぼくの頭をでてくれた。


 ぼくが帰って来たことを、こんなによろこんでくれるなんて。


 ぼくも、サビさんと会えたことが、うれしくて仕方がない。


 集落しゅうらくの猫達も、ぼく達が帰ってきたことに気付いて、一斉いっせいに集まってきた。


 ぼく達をかこんで、みんなうれしそうな笑顔で、「おかえり」と、言ってくれた。


「おかえり」と、言ってもらえるって、なんて幸せなんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る