第152話 ねこねこ仔猫なお医者さん

 ミケさんと話を終えた後、今度は茶トラ先生のところへ行った。


「ミャ」


 茶トラ先生、お話ししたいことがあるんです。


「おや、シロちゃん、どうしたニャ~? お話しって何かニャ~?」


 ぼくは茶トラ先生に、旅の途中で出会った猫達の病気や薬草について、くわしく説明した。


 茶トラ先生は真剣しんけんな表情で、ぼくの話を聞いてくれた。


「この世界には、ヨモギ以外にも、薬草がたくさんあるんだニャ~。ヨモギがかない病気もあるなんて、知らなかったニャ~」


 茶トラ先生は、この集落しゅうらくが出たことがないし、薬草もヨモギしか知らない。


 すると、茶トラ先生はニコニコ笑いながら、ぼくの頭をでた。


「今度は、私がシロちゃんから教わる番みたいだニャ~。これからもよろしくニャ~、仔猫のお医者さん」



 この日から、ぼくと茶トラ先生は、イチモツの集落しゅうらく周辺しゅうへんえている、薬草を調べることにした。


 調べてみれば、ぼくの知らない薬草がいっぱいあった。   


 旅をして、たくさんの猫と出会い、色んな経験をして、世界を知った気になっていたけれど。


 ぼくが見たのは、世界のほんの一部にすぎないんだと、気付いた。


 ぼくはまだまだ、この世界のことを知らなすぎる。


 もっとたくさんのことを学んで、もっと猫をすくいたい。


 ぼくの夢は、この世界にいる猫達を、1匹でも多くすくうこと。


 だから、いつかまた、旅に出よう。


 今回は、大きな山がある南側へ行ったから、次は北側へ行ってみたい。


 森の中に何があるのかも、しっかり調べてみたい。


 でも、まだしばらくは、イチモツの集落しゅうらくでのんびりしたいかな。


 ミケさんの担当医たんとういになるって、約束もしちゃったし。


 せめて、ミケさんの最期さいご看取みとる(死ぬまで見守る)までは、ここにいなければ。


 それが、お医者さんとしての責任だから。


 いや、お医者さんとしてではなく、ぼくがミケさんを看取みとりたいんだ。


 それに、イチモツの集落しゅうらくの猫達とも、離れたくない。


 どんな時も、別れはツラい。


 ヘタしたら、一生、この集落しゅうらくから出たいと、思わないかもしれない。


「旅に出たい」と思うその日まで、ぼくはイチモツの集落しゅうらくの猫だ。

 


          【第1部 おしまい】


 第2部はこちら⇩

https://kakuyomu.jp/works/16817330662414467313

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ねこねこ仔猫なお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話 橋元 宏平 @Kouhei-K

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