第一二八回 ついにこの時が。


 ――地上に降り立ち、対面する両者。ロボット越しではなく、素顔を晒した。


 お互いが、お互いの顔を見る。


 血の薔薇ブラディー・ローズのパイロットはドミノマスクを外し……つまり仮面で隠していた顔を見せたのだ。やはり……「アンさん」と声を漏らすしょうさんの表情が、何もかもを物語っていた。


 血の薔薇は、白雪しらゆきの時と同じように頭部が脱着し、

 地上に降り立っていて……そこから姿を見せた模様。僕らがエンペラーから降り立った時にはもう、翔さんとアンさんは対面していた。そしてよく考えてみたら、僕らが……少なくとも僕と千佳ちか、それに可奈かな太郎たろう君は、間違いなく初対面のはず……だったけど、


 何だろう?

 懐かしささえも感じるの。


 ……そこにさえも、すでに謎が発生しているようだ。


 それはさておき、まだ戦うのだろうか? 翔さんとアンさん、ロボット対決を終えた後でも? 僕らはもう、見守ることしかできない。そこは、……二人だけの聖域だから。


「やっぱりあなただったのね、翔……」


「アンさん……どうして戦わなければならないのです? シャルロットさん、辛い思いを笑顔で隠して、俺たちを送り出してくれる。俺たちが戦いで迷わないように。……本当は居た堪れないくらい会いたいに違いないのです。それでも、駄目ですか? 味方になって俺たちと共に、ボヘミアン組合を粛正できないのですか?」


 熱い思いをぶつける翔さん。……とても翔さんらしく思えた。香車の動きみたいに真っ直ぐな人。僕が翔さんに憧れている部分は、そういうところと思える。


「……青いね。まだまだ子供。

 情熱があることは素晴らしいと思うけど、もっと見据えた方がいい。大局を見るの」


 そう言うのだ。――大局とは何か? 深まる謎に、予測できない未来。そして僕らの身に何が起きるというのか? もしかしたら今、そのことが語られるのかもしれないの。



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