第四十四回 宿命という名の。


 ――それは、やはり戦うこと。しょうさんには、懐かしむ時間は与えられないの?



「……そんなのって、あんまりだよ」


「そう言うな、梨花りか。今はその先に向かうことだけ考えろ。お前は執筆が役目だろ」


 ……じゃあ、戦わなくて済むように、執筆すればいいんだ。


 今すぐは無理だけど、この先にあるもの、それは……フムフム、あるじゃないの。とっておきのこと。翔さんのお誕生日は、十月二十一日だから……うん、閃いたの。


「翔さん、今度の二十一日に僕の学園に来てほしいの。

 ……とっておきのね、プレゼントしてあげるからね、無茶は禁物だよ」


「ん? 何だ何だ? 梨花のくせにプレゼントって、急に気持ち悪いな」


「随分な言われようね、いつもお世話になってる先輩だから、折角……」


「わかった、行ってやるから、そう怒るな。その代わりお前、楽しませろよ、俺を」


 と、いう具合に確約が取れた。


 それを済ませるまで、待ってくれたの、ランバルさん。


「お話は、どうやら終わったようだね。……じゃあ、見せてもらおうか、チーム・セゾンが誇る四季折々ってやつの性能とやらを。そして翔、お前の上達ぶりを」


「……どうしても戦うの?」


「翔、それが我らの宿命だ」


 対峙する二つの機体。天使版の四季折々と、ジプシーの異名の、まるでタイガーの趣の黄色と黒……そして待ったなしの、隙あらばの攻撃で、それを受け、地に膝をついて、


「動きが、まるで違う?」


「……ああ、違う。違うのだよ、翔。

 ジプシーの異名とは違うのだよ。……この程度の脅威に臆するのか?」


 意表を突かれた? 熱を帯びる鞭。我が機体の胸の装甲が破損した。溶けたような切り傷。……だけど、だけれど、翔さんは……何でか笑っているの。その口元が。



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