第四十三回 ジェットの限り。


 ――それは、僕らの機体ではないの。相手の、ジプシーの異名の燃料こそがそれだ。



 そして、見慣れない機体。


 ……というよりかは、黄色と黒は初めてお目にかかる。それでもってよく見ると、何だか違うの。迫る三機の中の一機だけが。飛行形態から人型形態に変化したら一目瞭然。


 モノアイの形状は同じだけれど、ブレード・アンテナ……?


「階級を表す装飾」


 と、しょうさんの声が聞こえた。……いつもとは異なる声の色。動揺しているの? と、そう思えるような感じ。「ま、まさか……ランバルさん? ランバル大佐なの?」


 益々深まる動揺。モニターに映らなくても、翔さんの表情が想像できる程だ。

 すると、すると……


「翔か? 翔なのか?」


「ランバルさんですね」……ワンオクターヴ高い声。どうやら、知り合いのようだ。相手は声の感じからして年配の男性。三十代……いやいや四十代より上かも? もしかしたら翔さんのルーツを知っている人。ということは、翔さんのお母さんを知っている人。


 それが証拠に、次の言葉だ……


「大きくなったようだな、翔。……顔を見せてくれないか? 戦う前に、翔の顔が見たくてな。嘸かし孝美たかみに……君のお母さんに似てるのだろうな」


 感極まる様子? 声だけならそのように思えるのだけど、スマホのアドレス交換のように、お互いの情報が共有されるその瞬間だ。モニターに映し出される顔、お互いの顔。


「やっぱりランバルさんだ。お元気でしたか?」


「やっぱり君は、お母さんにソックリだな。綺麗だ、とても綺麗だ。……そして、この私とも。蛙の子はやっぱり蛙……血筋は争えんものだ」と、まるで懐かしがるような目。


「……どういう意味ですか? ランバルさん……?」


 胸騒ぎが激しく。――またも運命の御戯れか? それを知ったならば、また運命は。



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