第七十二回 仕込みの必殺技。


 ――それは、この機体の特徴を十二分に生かしたもの。超電磁を生み出したのだ。



 何が原因なのか?


 それは四季折々の設計に携わっている可奈かなでもわからないこと……ただ、しょうさんと四季折々の間に何かが生じたと考えられる。翔さんの熱い心と同調した雷にも似た電撃。


 この時から。エンペラーの風格となった時から、


 四季折々は、電撃ロボットとなったのだ。仕込まれた超電磁は、様々な必殺技の要となる。大いなるイーサムの一台目を真っ二つにした技は……


 これもまた、超電磁の力。そしてその技の名は、ゾーン・カッター。電撃を一点に集中したビームみたいなものだ。その切断の速さは一瞬。切れ味は鋼鉄をも真っ二つだ。



 ここからは、スーパーロボットの世界だ。


 五人乗りで、五十七メートルもの巨体となった時点で、もうリアルロボットではなくなったのだ。しかも、合体までしてしまったのだから……


 その合体も、とてもリアルから懸け離れたもの。二元の嘘が至る所にちりばめられて、これまでの一号機と二号機は合体したまま、一体型を保ち、そのまま変形を遂げる……原型をも留めずに。ジプシーの異名は飛行形態からの変形で、翼と両腕を担当し、モー・ニカは両脚を担当している。水面を走る能力を授かった。何となくだけれど、状況によっては分離も可能かもしれない。五体のマシーンとなることもできそうだと、可奈は言うの。


 その前に、渾身の必殺技を放つ。


 それも名付けたようなの、翔さんが。雄叫びと共に。


 ――ゾーン・ボンバーと。バズーカ砲のような破壊力を持つ光線技。電撃がビームとなるのだ。貫く一筋の光線! 聳え立つ両脚の上にある要塞部分を、貫通した。中の人の安否を思いつつも、命を奪わない設定。あくまでメカだけを破壊するようにと。


 それが翔さんの信念。同じく僕らの信念。誰の命も犠牲にはしないからと。



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