第七十三回 秘密は明かされ。


 ――それは、死闘が終わってからのお話だった。僕らが帰還した後だった。



 夕映えを背景に飛ぶ鳥のように、光の翼を広げながら、大空を駆け巡った。巨体が唸って空を飛んでいる……某アニメのEDエンディングによく似た光景だ。もちろん僕らはまだ生まれていない昭和のお話で、でもロボット好きの僕は、ちゃっかりユーチューブでチェックをしていた。そんな中で、ある時ママが言っていたことを思い出したの。


 ……戦争が残酷ということ。僕は、もしロボットアニメで行われている……例えば某一年戦争のような出来事を体感したとしたら、僕はまだ、ロボット好きのままでいられるのか、正直にいえば自信がなかったの。……でも、どんなに怖くても、戦争は嫌いでも、僕はロボットが大好きなの。プラモデルも大好き。バンプラ最高! は変わらないの。


 ……まあ、詳しくはまた、お話するとしてね、


 連絡が入ったのだ、せつから。研究所への帰還を急いだ。決して悪いニュースだからではなく、緊急事態は緊急事態だけど、心が弾む内容だった。特にしょうさんにとっては、胸を撫で下ろすような思いだっただろう。そしてまた、戦士から普通の女の子に戻れる時なの。



 ――ランバルさんが、無事に意識を取り戻したとのことだ。


 面会もOKとまでに。


 医務室の周囲の騒めき、特に医師たちは驚いたそうだ。……『恐るべき強靭な生命力だと』と、いうことは、流石は翔さんのお父さん。やはり只者ではなかった。


 研究所へ着くなり、駆ける翔さん。まっすぐに医務室へと。そして――


「お父さん!」

 と、飛び込むの。心はまだ子供。涙も宙に舞いながら。


「おいおい翔。お前幾つだよ」


「だって、だって……」と、泣きじゃくるの。そして僕らは、そんな二人を見守るように同じ医務室の片隅で、立ち尽くすの。そっと、優しい時間が続くようにと。



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