第七十四回 心して聞かれよ。


 ――場所は、まだ医務室。



 ランバルさんは「お話があるから」と言って、てっきりしょうさんと二人きりになるのかと思いきや、翔さんが「梨花りか、お前も一緒に聞いてくれ」と、呼び止めたの。


 僕は座る。翔さんが座っている隣の椅子に。


 ランバルさんはベッドの上で、上半身を起こして静かに語る。……「心して聞かれよ」と、付け加えたの。深刻なお話だということを、察することができたから。



「キッカー君は調べてくれたようだが……

 私を狙撃したのは他でもない、ボヘミアン組合のアンドロイドだ」


「ボヘミアン組合って、お父さんにとって味方だろ?

 同じ組織でそんなこと……」と、翔さんは驚きを隠せない様子で、


「あるんだよ。それが組織の裏の顔。邪魔者は排除される……つまり、あの時、翔を狙ったように思えたのだが、実は私を狙っていた。的確に急所を狙っていたんだ……」


「じゃあ、お父さんは、組織に戻ったのなら……」


「ああ。間違いなく今度は殺されるな。組織は私を、裏切り者と思っている。少なくとも邪魔な存在であることは間違いないな。正確には、裏切り者と仕立てられたのだ」


 この状況に於いても、ランバルさんは冷静に語る。……動揺する翔さんとは対照的なまでに。とても恐ろしいと思えた。娘に話す内容ではないのに、ランバルさんは容赦なく語るの。僕は思う。……ランバルさんの狙いは何なのだろうと。



 すると、翔さんは――


「だったら、お父さんは俺たちと一緒に戦いたいのか? ボヘミアン組合を矯正するために。そんなにも、もう狂ってたのか? 昔の組織とは、違うのか?」


「ああ、そうだ。立派に育った娘と、同じ志でな」と、ランバルさんは言ったのだ。



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