第七十五回 Gメン的な素顔。


 ――それは、もう仕掛けから始まっていた。


 極秘裏にも、少しずつ、少しずつ……シャルロットさんは動いていたのだ。



 以前にも話題になったことがある、シャルロットさんのスパイ説。それは、僕らが思っていたよりも、もっとシリアスでハードな内容だったの。そもそも、シャルロットさんは誰と繋がっていたのか? ボヘミアン組合も、今となっては分裂の一途……


 ランバル派は、ごく一部。


 かつての部下はどうなったのか? 身を案じるばかりで、その様子がランバルさんから犇々と伝わるそんな中。――警報が響き渡る。緊張が迸る。出撃? と思いきや、事態はもっと深刻で、侵入者がいるという情報が流れた。僕は一人……廊下を歩いていると、


「動くな」と、背後から、

 身動き取れないように、体の自由を奪われた。ナイフの刃先が首元に……


 相手は男性。しかも大人だから、女子中学生の僕の力では敵わない。いくらボクッ娘でも中身は女の子だから、しかも相手はプロのようで、こうなるまで気配を感じなかった。



 怖いけど、僕だってしょうさんと同じチームの一員だ。


「何が望みなの?」と、冷静を装う。


「案内してもらおうか、ランバル大佐のもとへ」と、低い声。……聞き覚えのある声のようだ。僕の記憶が確かならば。きっとあの時も、ランバルさんのこと、大佐と……なら、


「案内してあげるから、まずそのナイフを何とかして。それから体の自由も」


「……わかった。だが、少しでも妙な真似したら……」


「じゃあ、僕についてきて。すぐ会わしてあげるから」


 でも、脚が震えているのがわかる。……でも一歩一歩、そしてまた一歩、地に足が着くのを確かめるように歩くの。あくまで気丈に、涙が出そうなのも堪えながら。


 だって人質になったの、……アニメや映画の世界だけだと思っていたから。

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